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第41話 対面

俺は小さく息を吐いて気持ちを落ち着かせると、そっと銀ちゃんから離れて縹さんを見た。 「すいません…。俺…、受け入れてもらえたのが嬉しくて。それに、銀ちゃんは俺との契約を解くために郷に行ったんだって…。俺は銀ちゃんへの気持ちを諦めなきゃいけないって、思ってたんです…。今、俺の気持ちを受け止めてもらえて、認めてもらえて、こんなに幸せでいいのかなって…っ」 話してるうちに、また涙がぽろりと零れ落ちて、慌てて手の甲で拭う。浅葱がハンカチを横から差し出して笑いながら言った。 「俺は2人の気持ちに気付いてたけどね。2人とも、お互いの事をずれた方向に思いやって、なかなか上手くいかないから、ほんと、もやもやしたよっ。でも良かった!俺もすげー嬉しいっ」 「そうだったんだ…。ありがとう、浅葱」 俺はハンカチで顔を拭って、浅葱に笑い返した。 「凛くん、銀はね、君に再会するのをすごく楽しみにしていた。再会してすぐに、『凛が男だった…』と落ち込んで報告に来たよ。でもね、1週間もしないうちにまた戻って来て、『男だとしても、やっぱり凛が好きだ。凛じゃないと駄目だ』と言ったんだ。『凛に無理強いはしたくないけど、手放す気もない』とも言ってたな。だから、君も同じ気持ちでいてくれて本当に良かった…」 縹さんが話してくれた内容に驚いて、銀ちゃんを見上げる。銀ちゃんは、ばつが悪そうに俺を見て、苦笑いを浮かべた。 「凛くん…、聞いてるかもしれないが、私の弟が銀の事をよく思っていない。だから君にも、もしかして辛く当たるかもしれない。まあ明日から、私と一緒にしばらく郷を離れるから会うことはないと思うが、気をつけるように。何かあったら、銀や私を頼ってくれていいからね」 俺は大きく頷いて、お礼を述べる。 「ありがとうございます。気を付けます。あの…郷から離れるって、どこかに行かれるんですか?」 「全国に点在する天狗の郷の長達との会合があるんだ。せっかく会えたのに、明日からしばらく留守にするよ。そうだ、銀…、私もいない事だし、明日にでも凛くんを嫁にしたらどうだ?」 「俺もそう思っていた。早い方がいいしな…」 「えっ、マジで?俺がどきどきするんですけどっ」 縹さんの提案に、銀ちゃんが納得をして、浅葱が興奮し出した。 「嫁にって、結婚するの…?」 首を傾げて尋ねる俺に、3人が顔を見合わせた。

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