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第42話 契約の意味
縹さんは「おまえ、話してないのか?」と、銀ちゃんに尋ねて俺を見る。
「凛くん…君と銀が交わした花嫁の契約はね、性交をする事で契約が成立するんだよ。君、16才の誕生日まで、後2ヶ月程なんだろう?そんなに日もないし、機会があるうちに銀としておくといい。銀もそのつもりみたいだし」
「せいこう……」
言われた事がぴんとこなくて、ぼんやりと呟く俺に、浅葱が近寄って来て言った。
「あのね凛、つまり、銀様とセックスするってこと。契約を交わした2人は、身体を繋げてやっと契約が成立するの。凛の誕生日が来ちゃったら、凛の命が削られていくって聞いてるでしょ?チャンスがあるうちにやっとこうよ。明日は、縹様はお留守だし、俺も邪魔しないよ、ね?」
「セッ⁉︎」
俺は顔を真っ赤にして、鯉のように口をパクパクと開ける。
ーーえっ?えーっっ⁉︎…い、いや、まあ…契約ってそういう事なのかなぁとは薄々思ってはいたけどもっ。でも結婚したらそれでいいのかな、とも思ってたんだ…。そう言えば銀ちゃん、強い呪力だって言ってたもんね…。そんな訳ないよね…。べ、別に俺はしたくない訳じゃない。だって、銀ちゃんにもっと触れたり触れられたりしたいし…。でも待って!明日?いきなりっ⁉︎
俺がちらりと銀ちゃんを見ると、にこりと微笑まれた。
「ふふ、顔が赤い…。恥ずかしいのか?おまえ、俺の花嫁になりたいと言っただろう。それは、俺に抱かれたいと言ったのと同じだ。俺は、そう言ってもらえて嬉しかった。おまえを抱きしめて、温もりや匂いを感じる度に我慢していたんだ…。待ち遠しかった。凛、早く俺のものになれ…」
銀ちゃんが膝の上に置いた俺の手を、ぎゅっと握る。
ーーこの人達の羞恥心はどうなってんの…?さっきから堂々と、性交だのセックスだの早くやれだの……。
で、でも…恥ずかしいけど俺も銀ちゃんと触れ合いたい。今だって、手だけじゃ足りない…。
俺は、銀ちゃんの手を強く握り返すと、思い切って言った。
「わかった…よろしくお願いします…。俺を銀ちゃんのものにして…」
銀ちゃんを見上げて、照れ笑いを浮かべる。
銀ちゃんが素早く俺の頭を引き寄せて胸に抱え込んだ。頭の上から「くそ…っ、ヤバい…」と呟く声が聞こえてくる。
「わははっ、いや、見てるこっちが照れるな、なあ浅葱。そうかそうか、2人とも、明日は存分にしてくれて構わないからな。ふふふ、また夕飯時に呼ぶから、それまで2人でゆっくりしていなさい」
縹さんは、「いや、羨ましい」と言いながら部屋を出て行った。
浅葱も、俺の背中をぽんと叩いて出て行く。
俺は、自分がとんでもない事を言ったのに気付いて、しばらく顔を上げる事が出来なかった。
あれから銀ちゃんの部屋に戻り、銀ちゃんの胡座の上に座らされて、啄むようにキスを繰り返している。
ーー今日だけで一生分のキスをしてる気がする…。
銀ちゃんの顔が離れて、俺は熱い息を吐いた。
「ねぇ、銀ちゃん…、契約の時にもキスしたじゃん…。あの時、なんか苦い味がした気がするんだけど…」
「ん?ああ、あれは俺の血を舐めさせたからだ。俺の血をおまえの体内に入れる事で契約が成り立つ」
「そうなんだ。え、じゃあキスしなくても、ただ舐めさせるだけでよかったんじゃないの?」
「俺がしたかったからした」
「……」
銀ちゃんて、俺が知らないと思ってキスしたり舐めたり抱きしめたり、すごく好き放題してるよね…。
俺はじっとりと睨むけど、イケメンな笑顔を見てるとつい許してしまう。
俺がそんな事を思ってるとも知らずに、銀ちゃんが俺の髪の毛を梳きながら言った。
「凛の家族にも挨拶しないとな。凛の家に戻ったら、とりあえずは電話で話すよ」
「えっ、また帰ってきた時でいいよっ」
「駄目だ、大事な凛をもらうんだ。ちゃんと納得して許してもらわないと。でも、先に凛を抱くことは内緒な…」
銀ちゃんの少し赤くなった顔を見て、俺もつられて赤くなる。
でも、俺の事をほんとに大事に思ってくれてるのがすごく嬉しくて、銀ちゃんの首に腕を回すと、顔を寄せ耳元で「大好き」と囁いた。
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