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第43話 招待
夕飯は、縹さんと銀ちゃん、俺と浅葱で楽しく食べて過ごした。銀ちゃんのお母さんは、友達と旅行に行ってて今はいないけど、「また会ってやって欲しい。きっと凛くんを気に入るから」と、縹さんが言ってくれた。
それと、なぜ浅葱がいつも銀ちゃんの近くにいるのかというと、浅葱は縹さんの信頼する部下の子供で、将来銀ちゃんの側で仕える為に、一ノ瀬家で勉強中なんだそうだ。
「銀様は俺の憧れなんだ」
と言って、浅葱は目をきらきらさせていた。
翌日の早朝に、俺と銀ちゃんで縹さんを見送った。
縹さんの姿が見えなくなって、2人顔を見合わせて照れ臭いのを誤魔化すように笑う。
ーーまだ恥ずかしいけれど、俺は覚悟が出来た。 今日、銀ちゃんと一つになる。
心の準備は出来たけど、昨日からずっと、どきどきしっぱなしで、俺の心臓は大丈夫だろうかと心配になった…。
昼を過ぎた頃に、織部さんが来た。
鉄さんが、『2人をお祝いしたいからぜひ来て欲しい』と招待してくれてる事を伝えて、帰って行った。
織部さんは、鉄さんの家に仕えていて、とても優秀だから、偶に銀ちゃんの家の仕事も手伝ってもらってるらしい。
夕方になると、俺と銀ちゃん、浅葱の3人で、鉄さん家の別邸だという、街から離れた山の中腹にある家へと飛んで行った。
今日も銀ちゃんは着物を着ている。綺麗な濃い青色で「青鈍(あおにび)色だ」と教えてくれた。
俺は白のVネックTシャツにグレーのチノパン、浅葱も俺と似たようなTシャツとズボン姿だ。浅葱は「着物は窮屈で苦手なんだ」と苦笑いしていた。
招待された家の前で織部さんが待っていて、玄関とは反対側にある部屋に通された。彼はいつもと同じ、スーツを着ている。
その部屋の縁側から見える庭の向こう側は、崖になっていた。覗きに行こうとしたら、かなり深いから危ないと銀ちゃんに止められた。
「でも、周りの景色は最高なんだよ。春の桜や秋の紅葉、冬の雪景色がとても綺麗なんだ。また見においで」
部屋で待っていた鉄さんが優しく微笑んで、そう言ってくれる。
「はいっ、楽しみにしてます」
俺は、大きく頷く。
優しい人達に囲まれて、愛しい銀ちゃんがすぐ傍にいて、俺はこれ以上ないくらいに幸せを感じていた。
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