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第44話 招待

通された部屋には、まるで高級旅館に来たのかと錯覚するような豪華な料理が並べられていた。 床の間を背にした上座に、俺と銀ちゃんが座る。銀ちゃんの斜め前に、薄茶色の縦縞が入った着物を着た鉄さん、織部さん、俺の斜め前に浅葱が座った。 「この家には僕達だけで、人払いをしてあるから遠慮なく楽しんでね。しろ、凛くん、おめでとう!」 「ああ、ありがとう」 「あ、ありがとうございます…」 鉄さんの挨拶で、皆んな飲み物を持って乾杯をする。俺以外は全員ビールを飲んでいた。 「え、浅葱…ビール飲んだの?」 皆んなと一緒になってビールを飲んでる浅葱に驚く。 「凛は飲まないの?あ、そっか。なんか人間は未成年は飲んじゃダメとか決まってたね〜。でもせっかくのお祝いだし飲んでみたら?」 浅葱が俺にビールの入ったコップを差し出してくる。俺はそれを受け取ると、一口ごくりと飲んだ。途端に口の中に苦い味が広がって顔をしかめる。 「う…っ、にが…」 渋い顔の俺の手から銀ちゃんがコップを奪い取ると、残っていたビールを一気に飲み干した。そして、俺を見て「無理をするな」と低く囁く。 銀ちゃんの濡れた唇や低く掠れた声に、俺の胸がどきんと跳ねた。 ーー銀ちゃん、すげー色っぽい…。 つい、今夜の事が頭をよぎってしまい、俺は熱くなった頰を両手で抑えて俯いた。 「ん?どうした、凛。あれだけで酔ったのか?」 俺に顔を近づけて聞いてきた銀ちゃんの耳に口を寄せて、小さく囁く。 「…早く、2人になりたい…って思った…」 銀ちゃんは、一瞬動きを止めた後に目を細めて「俺もだ」と、囁き返してきた。 そんな俺達2人を、浅葱がにやにやとしながら見つめていた。

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