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第46話 邪魔な存在

鉄さんが、ゆっくりとした動作で俺に近付いて来る。 「く、鉄さん?なに…?」 俺は銀ちゃんを背に庇うように、両手を拡げた。 「くくっ、ごめんね、しろ…。匂いも味もしない薬を少しだけ、お酒に混ぜておいたんだ。身体が痺れて動かないだろ?しろや浅葱に邪魔されたくないからさぁ…。ねぇ、2人とも、そこでゆっくり見ててよ、凛くんが死ぬところ」 「え……」 ーー死ぬって…?誰が…? 俺はショックで、何を言われてるのか中々理解出来ずに固まってしまった。銀ちゃんが腕を伸ばして俺の腰を引き寄せ、鉄さんを睨み付ける。 「凛に何をするつもりだ…くろっ、凛に手を出したら…例えおまえでも許さないっ!」 「鉄様…っ、凛をどうするんですかっ⁉︎」 銀ちゃんと浅葱が同時に叫ぶ。 「凛くん、嫌いなんだよね…。僕はね、しろが婚姻の契約をしたと聞いた時にすごくショックを受けた。けどまあ、しろには後継ぎが必要だし、子供を作るには仕方ないと思ったんだ…。なのにさぁ、契約をした相手が男だって?しかも人間だよ?子供を産めない男を選ぶんならさ、僕でいいじゃないか。僕は産まれた時からしろのすぐ近くにいたんだ。誰よりもしろを知ってる。しろの力になれる。おまえなんかより、ずっとしろを想ってるっ!おまえは空も飛べないし何の力もないくせにっ!…まあ、僕はもう、しろの隣にいたいとは思わないけど、だからと言って、おまえがしろの隣にいるのは、どうしても許せない…。だからごめんね…死んでくれる?」 鉄さんはそう言うと、持っていた短刀を振り上げ、躊躇なく俺を狙って振り下ろした。 咄嗟に銀ちゃんが俺を抱えて飛んで逃げる。だけど、開け放たれたガラス戸から庭に出た所で、俺を守るように抱え込んで地面に落ちた。 衝撃と身体を打った痛みに堪えて、銀ちゃんの腕から身体を起こす。銀ちゃんの名前を呼びながら翼の生えた背中に触れると、ぬるりとする感触がした。 部屋から漏れる灯りの中で恐る恐る見た俺の手は、真っ赤に染まっていた。 「い、いやだっ、銀ちゃん!銀ちゃんっ!しっかりしてっ」 「…凛…、大丈夫だ…。おまえは、怪我はないか…?」 「お、俺は大丈夫だよっ。ど、どこ怪我したのっ?刺されたの…っ?」 「おまえが無事ならいい…。大したことはない…」 「ぐちゃぐちゃと煩いなぁ」 すぐ傍から聞こえた声にビクついて顔を上げる。銀ちゃんを覗き込んでいた俺を、鉄さんが思いっ切り蹴り上げて、俺の身体は崖の端まで飛ばされた。

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