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第51話 手当て

俺の胸には包帯が巻かれ、肩や腕にもガーゼが貼られていた。それをゆっくりと剥がして、傷口に丁寧に軟膏を塗り込んでいく。軟膏が傷口にぴりりとしみて、思わず肩がびくんと跳ねた。 「これはしみるけどよく効くんだ。元通り、綺麗になると思うよ。君は肌が白くて綺麗だから、ちゃんと治してあげる」 「そ、うですか…?ありがとう、ございます…」 軟膏を塗り終えると、新しいガーゼを貼り包帯を巻いて、浴衣をきちんと着せてくれた。 そういえば、こんなに世話になってるのに名前を聞いていない事に気付いた。 「あの…、俺、凛って言います…。あなたは?」 「あ、名乗ってなかったね。俺の名前は心隠(しおん)。心に隠すと書いて、しおん。りんはどんな字?」 「凛とする、とかの…。にすいへんの」 「ああ、わかった。うん、凛ね。君によく合ってる」 綺麗な笑顔につられて、俺も目を細める。 「凛は2日間眠っていたんだ。お腹が空いただろう?お粥を作ってくるから待ってて。それまで、また眠ってていいからね」 もう一度、俺を寝かせて薄い布団をそっと掛ける。心隠さんは、先程飲んだ水で濡れた俺の口の端を親指で拭うと、その指をぺろりと舐めて立ち上がり、部屋を出て行った。 少し身体を起こしていただけなのに、とても疲れてまた微睡み始める。ずいぶんと、体力も落ちてしまっているみたいだ。いつまでもここで世話になる訳にはいかないから、早く治さないと…。 それにしても、妖の世界には不思議な薬がたくさんあるんだな。心隠さんは何の妖なんだろう。銀ちゃんや清忠とも違う…美しくて怖い感じ…。 色々と考えている内に、俺はいつの間にかまた眠ってしまっていた。

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