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第53話 回復
1週間もすると、起き上がってゆっくりと歩けるようになった。ご飯も普通に食べて、体力も戻ってきた。
傷も塞がってきて、何日か振りにお風呂に入った時に、鏡に映った裸を見て驚いた。身体の至る所に青痣が出来て、背中と腕に大きな切り傷の痕がある。切り傷は、軟膏のおかげかずいぶんと治っていて、今はピンク色に少し盛り上がっているだけになっていた。
ーーふふ、これ…銀ちゃんが見たら、俺の全身を舐めて治すとか言いそう…。
ふいに銀ちゃんを思い出して、胸が詰まる。
銀ちゃんに会いたい。でも、鉄さんに見つかって、また銀ちゃんを傷付けられたらと思うと怖い。
だからと言って、いつまでもここに居させてもらうわけにはいかない。
身体も動くようになったし、俺はとりあえず家に戻ろうと思った。
俺の着ていたTシャツは、破れて血が付いていたから捨ててもらった。なので、今は心隠さんの白シャツを借りているのだけど、彼もまた背が高いから、俺には大き過ぎて、袖を何重にも折り曲げないといけなかった。
ある朝、俺は朝食を食べ終わり、縁側に腰掛けてぼんやりと外を眺めていた。この家は、山の中にぽつんと一軒だけあるようで、周りは木に囲まれている。
心隠さんに、ここの場所を聞いても詳しくは教えてもらえなかったけど、「君が落ちた崖からは、少し離れてるよ」とだけ言っていた。
ふと影が差して横を向くと、心隠さんが傍に来ていて俺の隣に座った。
「今日も陽射しが強いね。何か考え事?」
いつもの綺麗な笑みを浮かべて聞いてくる。
「心隠さん、俺、そろそろ家に帰ろうと思ってます。だいぶん動けるようになったし…。本当にありがとうございました。あの…、何かお礼をしたいんですけど…」
俺は窺うように、心隠さんを見上げる。
「そっか…、寂しいけど凛の生活があるからね。お礼ね…、してくれると言うのなら、欲しいものがあるかな」
心隠さんの首を傾げる姿が可愛く見えて、思わず顔が綻んだ。
「ふふ、何ですか?」
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