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第57話 銀side 凛の行方
かなりの人数で凛を捜したが、見つける事が出来なかった。
鬼が住んでると言われる山の付近まで、凛の血の匂いが微かにしていたのだが、結界が張られているのか途中でわからなくなってしまった。
俺は凛を思い、気が狂いそうな時を過ごした。
凛がいなくなって11日目に、妖狐の清忠から『凛が家に帰って来ている』と連絡が入った。
俺は浅葱を伴って凛の家へ急いで向かう。家の前では、清忠が俺が来るのを待っていた。
「凛はっ⁉︎」
「お久しぶりです、一ノ瀬さん。俺もちょっと前に会ったばかりで…。今は家の中にいます」
「わかった。ありがとう」
俺は気が急いて、清忠との会話もそこそこに玄関へ向かう。
「あっ!待って下さいっ。あの…凛ちゃんの様子がちょっと変なんです。大きな怪我も見当たらないし、話しててもいつもの凛ちゃんで、どこが…と言われてもわからないんですけど…。でも、何か変なんです…」
一体何を言ってるのだと不可解に思いながらも、俺は「わかった」と返事をして玄関の引き戸を開けた。
玄関の中へ入って「凛!」と名前を呼ぶ。少しすると居間の扉が開いて凛が出てきた。
ーーああ…凛だ…。凛が俺の目の前にいる。無事だった…生きていた…っ。
俺は玄関を駆け上がると凛の前に立ち、その華奢な身体を強く抱きしめた。
凛の温もりに凛の匂い…。確かに腕の中に感じる存在に、俺は心から安堵して震えた。
腕の中の凛が身じろぎをして、困った顔で俺を見上げる。その赤い唇に触れたくて、顔を近付けようとしたその時、凛が発した言葉に驚いて動きが止まった。
「い、一ノ瀬さんっ、どうしたんですか?実家から今戻って来たんですか?」
「…り、ん?」
「すいません…、苦しいので離して下さい。あ、清忠どこ行ってたんだよ、早く上がって。浅葱も久しぶり」
凛が俺の胸を軽く押して身体を離し、清忠と浅葱に声をかけてから居間へと戻って行く。
俺は訳がわからなくて、ただ凛の背中を見つめるしかなかった。
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