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第61話 銀side 代償
「それで凛が元に戻るなら、容易いことだ」
俺は即答する。凛が元に戻る為なら、俺の全てを渡してもいいくらいだ。
俺は背中に意識を集中させて、銀色の翼を出した。
隣で凛が「わぁ、すごい…」と声を上げて驚く。そして何かに気付いて、慌てて自分の部屋へと駆け上がって行った。
すぐに降りて来た凛の手には、銀色の羽根が握られていた。俺の翼に羽根を当てて「同じだ」と呟く。
「この羽根…いつからどうして持ってるのかわからないけど、俺、すごく大事に思ってて…。これって天狗?の羽根なんですか?一ノ瀬さんの?一ノ瀬さんは天狗なの…?」
「そうだ、それは俺の羽根だ…」
「思った通り、すごく綺麗だね。早く下さいよ」
心隠が何か言ってるけれど、俺の耳には入ってこない。
凛が、俺の羽根を大事だと言って持っていた。それが、心底嬉しい。
早く俺の花嫁だということを思い出して欲しい。思い出した凛を、この腕に抱きたい。
「きれい…」と初めて俺の翼を見た時のように、目をきらきらとさせている。そんな凛に、思わず手を伸ばしそうになって拳を強く握った。
俺は、しつこく心隠に確認をする。
「必ず凛にかけた術を解くと約束しろ。そうしたら、翼の一つや二つ、くれてやる」
「俺は嘘はつかない。それに、一つで充分ですよ。二つは邪魔です」
「ちっ…」
俺は、俺の翼を指差す心隠を睨んで舌打ちをした。そして、背中に腕を回して右の翼を掴んだ。
俺は大きく息を吐いて、翼を掴む手にぐっと力を入れる。その瞬間、凛が俺の腕にしがみ付いて叫んだ。
「待って!ほんとに翼を取っちゃうの?そんな事したら飛べなくなるよ?すごく綺麗な翼なのに…。それに俺にかけた術って何?よくわからないけど…俺、別に困ってないよ。そんな事の為に、自分の身体を傷付けるのはやめてよっ」
凛の言葉が俺の胸に突き刺さる。思わず凛の身体を引き寄せて、きつく抱きしめていた。
「そんな事じゃない、すごく大事な事だっ。早く思い出さないとおまえは…っ。いや、俺がどうしても思い出して欲しいんだ。凛…、頼む…思い出してくれ。どうかおまえだけの呼び方で、俺を呼んでくれっ」
凛を胸に搔き抱き、俺は全身を震わせて懇願する。
凛は抵抗する事もなく、大人しく俺の腕に抱かれて目を閉じた。そして、ぶつぶつと何かを呟き出した。
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