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第63話 彼の名前
どこからか綺麗な少年が現れて、子供の俺に声をかけた。
『おまえ、どうしたんだ?迷子か?』
『だ、だれ?』
『俺はしろがねと言う。銀(ぎん)と書いてしろがねと読む』
『…ぎんちゃん』
『…まあ、いいか。おまえは?』
『凛(りん)って言うの』
しろがねと言った少年が、俺の手を引いて遊んでくれている。
『凛、銀ちゃんとまた遊びたい』
『いつでも来ていいぜ。この場所で俺を呼べ』
『うん、銀ちゃん大好き!』
俺は神社の裏で少年の名前を呼ぶ。木々の間から少年が現れて俺を抱き上げ、そして目を閉じてろと言う。
少しして目を開けた俺の前に、銀色の翼が見えた。
『うわぁ、きれい、かっこいい!』
『そうか、ありがとう』
少年は少し照れた顔をして、俺を抱えて飛んでいく。
少年は俺をいろんな所に連れて行き、遊んでくれた。
俺はいつも、『銀ちゃん大好き』と彼の頰にキスをする。
俺が両親に東京に引っ越すと言われ、少年に会えなくなると言って、泣いている。
少年に、『俺もここを離れて遠くへ行く』と言われてますます大泣きをしている。
少年が俺を抱きしめて、『俺はおまえが好きだ。俺の花嫁になってくれないか』と言った。俺はすぐに『なりたい!』と答え、少年が『今から花嫁の契約をする』と言って、俺にキスをした。
あの少年は、一ノ瀬さん?そうだ、あの時契約をして…胸に契約の印が付いて…。それから…、9年半振りに再会して……。
『凛、愛してる。約束通り俺の花嫁になれ…』
あ……空の真ん中で、俺を抱きしめて言ってくれたんだ…。俺の大好きな、俺の愛する……。
「銀ちゃん…?」
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