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第73話 穴があったら入りたい

結局は、銀ちゃんが1人で早目の夕飯を作ってくれた。 俺は少し休んでから起き上がろうとしたけど、再び叫び声をあげて布団に倒れ込んだ。 その日、俺は銀ちゃんの部屋からトイレ以外で出る事はなかった。 それと俺の身体は、俺の出したもので汚れてたはずなんだけど、銀ちゃんが洗ってくれたのか綺麗になっていた。 中に入ってた銀ちゃんのものも、出してくれたみたいだった。でも、しばらく経ってもお腹の中がぽかぽかとあったかい気がして、俺はすごく嬉しいような恥ずかしいような気持ちで、お腹をそっと撫でていた。 俺と銀ちゃんが身体を繋げた次の日、清忠と浅葱がお祝いを持って来た。お祝いを持って来たって事は、やっぱり昨日何をしてたかわかってたって事で……。 俺は2人を直視出来なくて、銀ちゃんの背中にぴたりとひっついて隠れた。 でも2人とも、普段と変わらない様子で「凛ちゃんおめでとう」とか「凛、良かったな」って声をかけてくる。 なんだか、俺だけ隠れてるのが逆に恥ずかしくなってきて、照れ笑いをしながら顔を出した。 「はい、これ。お揃いのパジャマだから2人で着てよ」 「ありがとう…清」 綺麗にラッピングされた包みを受け取って、清忠に笑顔でお礼を言う。 「俺は縹様から日本酒と赤飯と鯛を預かって来た。それとこれは俺から。必要ないかもだけど〜」 大きな箱があると思ったら、そんなに運んで来てたのか…。 「ん?なんで銀ちゃんのお父さんが知ってるの?」 「昨日の夕方に、銀様から連絡があったよ。『凛を嫁にした』って。縹様も凛の事、心配してたからとても喜んでらした」 銀ちゃんのお父さん、俺のこと気にかけてくれてたんだ…。それに、喜んでくれて嬉しい…けど、次に会う時どんな顔すればいいんだろう。ていうか…。 「銀ちゃん…、行動が早いね…」 「嬉しかったんだからいいだろ?」 「うん…」 銀ちゃんが嬉しいなら、まあいいけど。 「ねぇ浅葱、浅葱がくれたこれは何が入ってるの?」 「特大コンドーム!普通サイズじゃ、銀様のは入らないだろ?」 「とっ、とく…コンド…っ」 銀ちゃんが、固まる俺の手からひょいとコンドームの箱を摘んで持ち上げる。 「浅葱、悪いけど俺は使わない。こんな物使ったら凛に俺の匂いを付けれないだろ」 「やっぱり?そう思ったんですけどね〜。まあ使う事もあるかもしれないですし、一応もらって下さい」 「仕方ないな…」 そう言うと、銀ちゃんは箱を清忠からのプレゼントの包みの上に置いた。 「それにしても凛を心配して来てみたらさぁ、結界が張られてて入れないし、家の中から可愛い声が聞こえて来るし。驚いちゃった。ふふふ、俺、どきどきしちゃったよ」 「うん、俺もびっくりした。凛ちゃん、あんな可愛い声出すんだね。なんかさ、一ノ瀬さんに抱かれて色気が出てきてるから気をつけなよ」 「え、そうかな…。じゃなくて!な、何言ってんのっ?恥ずかしいからやめろ…っ」 「「なにが?」」 俺が止めた理由がわかってないようで、2人で首を傾げる。 ーーそうだった。この人達って羞恥心が薄いんだった。薄いっていうか、ないのかもしれない…。 俺が羞恥で顔を赤く染め微かに震えていると、背後から俺でもわかるぐらいの殺気を感じた。 俺の前にいる清忠と浅葱が、はっと俺の後ろを見て、みるみる顔を青ざめさせる。 「おまえら…、やはり凛の声を聞いてたんだな。今すぐ忘れろっ。でないと耳を聞こえなくしてやる…」 「「はいっ、忘れますっ!」」 銀ちゃんの迫力に怯える2人が、少し可哀想になる。銀ちゃんは、俺以外の人への態度がとても酷いと思った。

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