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第91話 蛇の毒

「はぁ…助かった。なんかよくわかんないけど、ばあちゃん…ありがと…」 俺は木の根元に凭れて座り、空を仰いで呟いた。 目を閉じて顔に雨を受けていると、微かに俺を呼ぶ清忠の声が聞こえた気がして、声を張り上げる。 「清ーっ!ここだよっ!」 だんだんと清忠ともう一人の声が近付いてきて、俺は更に大声で叫んだ。 「清っ!あれ?もしかして浅葱もいる?」 「凛ちゃん!」 「凛っ、大丈夫⁉︎」 清忠と浅葱が空から降りて来る。突風に煽られて、鉄さん達の落とした傘が転がり飛んでいった。 地面に降り立った清忠が、俺に駆け寄りぎゅっと抱きしめた。 「凛ちゃん…っ、どこ行ってたんだよっ!すごく心配したんだよ?無事でよかった…」 「うん…ごめんね…。ていうか清、空飛べたんだ。それに…こ、これ…っ、触っていい⁉︎」 俺を抱きしめる清忠のお尻に、もふもふの尻尾が生えていた。それをそっと握ると、雨滴を弾いてすごく柔らかくて気持ちいい。 「う…くすぐったいからそっとな…。もう、心配したのに呑気な奴だな。この姿だと、空を飛ぶ妖に手を貸してもらえれば、少しくらいなら飛べる」 「へぇ〜。俺、清のそんな姿、初めて見た!耳もすっげえ可愛いっ」 「可愛くないから…っ。そんな事より、凛ちゃんの身体熱くない?」 「え…」 清忠に言われてみて、確かに身体が火照って熱いのに気付く。 「ねぇ凛、首の所、どうしたの?」 浅葱に指摘されて首に手を当てる。ぼーっとする頭で考えて、そういえば真白さんに噛まれた事を思い出した。 「あ…たぶん、蛇の妖に噛まれた…と、思う」 「「ええっ‼︎」」 俺の言葉に、2人揃ってひどく驚き大きな声を上げた。 「凛っ、それまずいよっ。身体が熱いのは蛇の毒のせいかもしれない!清忠、俺が凛に触るのは駄目だから、清忠が毒を吸い出してっ」 「ええっ!俺も怒られると思うんだけど…。て、そんな事言ってる場合じゃないよなっ。凛ちゃん、ちょっと我慢しろよ」 状況がよくわからないまま頷くと、清忠が俺の首の噛まれたらしき箇所に唇を当て、強く吸った。

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