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第94話 安堵
「凛っ、何があった?大丈夫なのかっ?」
銀ちゃんは俺の傍に駆け寄ると、真上から覗き込んで俺の頰に手を当てた。
「熱いな…。すぐに治してやるからな。てん…親族の家がこの近くにある。そこでゆっくり休ませてもらおう。そこに行くまで我慢できるか?」
俺の事でひどく心配して慌てる銀ちゃんを見てると、とても愛しい気持ちが溢れて、思わず笑ってしまった。
「ふふ…銀ちゃん、落ち着いて…。俺は大丈夫だよ…。ふぅ…でも、しんどくて辛いから…甘えても、いい…?それに、怖い目にあったから…なぐさめてくれる…?」
黙って俺の言葉に耳を傾けていた銀ちゃんが、突然俺の上に被さった。そして、ぎゅうぎゅうと抱きしめて頬を擦り寄せてきた。
「わっ、え…銀ちゃん?あ、あの、人がいるんだけど…」
ちらりと倉橋を見ると、目を見開いて俺達を凝視している。
俺は、銀ちゃんの背中をパシパシと叩いた。でも銀ちゃんは俺を腕の中に閉じ込めて、繰り返し俺の名前を呟いている。
その声があまりにも苦しそうで、俺の胸が締めつけられた。
「凛…、大体の状況は浅葱に聞いた。けど、おまえが元気になったら、何があったのか詳しく話してくれ。俺は…またおまえを守ってやれなかったな…」
「そんな事ない…。いつも充分守ってもらってるよ…。はぁ…っ。銀ちゃん…ごめん…、休んでいい…?」
話してるうちに呼吸が苦しくなって、目も回ってきた。吐く息も熱く、もしかして熱が上がってきたのかもしれない。
俺は、はあはあと荒い息を繰り返して目を閉じた。
銀ちゃんの身体が離れてすぐに、俺の身体が何かで包まれ、ふわりと抱き上げられる。
「清忠、凛の荷物を貸してくれ。今すぐ凛を連れて帰る。先生には話してあるから。ああ、おまえはここに残って、予定通りに過ごせ。でないと凛が気にするだろ?帰って来たら、会いに来てやってくれ…。それと君、騒がしくして悪かったな」
清忠と倉橋を部屋に残し、銀ちゃんが俺を抱き抱えて部屋を出た。
銀ちゃんが歩く振動に合わせて、頭がずきずきと痛んで辛い。俺は眉間にシワを寄せて、短く息を繰り返した。
ーーああ、苦しい…。早く、銀ちゃんの匂いに包まれてゆっくり休みたい…。
俺は意識を朦朧とさせながら、銀ちゃんの胸に顔を強く押し当てていた。
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