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第95話 執着心

小さく物音が聞こえて、俺は意識を浮上させる。まだ頭はがんがんと痛くて身体も熱い。 「んぅ…」 身体がとても怠くて重く、少ししか動かせない。それに声も出しづらかった。 「凛?気がついたのか?」 汗で額に張り付いた俺の前髪を、銀ちゃんが長い指で流す。 ぴくぴくと瞼を震わせて、ゆっくりと目を開けた。 声で傍にいるのはわかっていたけど、心配そうに俺を見る銀ちゃんの姿を確認して、安心する。 銀ちゃんの横に、棒にぶら下がった何かの薬剤のパックがあり、そこから管で俺の腕に繋がれていた。 「凛、辛いな…。この郷には、人間界で医師をしている者がいる。その者に診てもらったが、風邪を引いてるのと蛇の毒とで、身体がひどく弱ってる。すぐ治してやると言ったのに、すまない…」 俺の頰を撫でて話す銀ちゃんが、泣きそうな顔をしてるように見えて、俺は微笑んで銀ちゃんを見た。 「だ、いじょ…ぶ。俺…強いんだから…。ね…喉、渇いた…。水…」 銀ちゃんは頷いて、枕元に置いてあったペットボトルの水を口に含んだ。そして、俺の頭を少し上げて唇をぴたりと合わせる。常温の水のはずなのに、今の俺の身体には、とても冷たくて美味しかった。 「は…ぁ、もっと…」 「ん…」 何度か口移しで飲ませてもらうと、少しだけ頭がすっきりしてきた。 もう一度、俺を布団に寝かせて、銀ちゃんが点滴がない側に添い寝をする。俺が怠い身体をゆっくりと動かし横に向けると、銀ちゃんが腕を伸ばして俺を抱き寄せた。 「凛…、俺と再会してから、おまえは危険な目に合ってばかりだ。俺はおまえを守ると決めたのに、危ない時に傍にいて守ってやれない…。でも、俺はおまえを放せない。これからも、おまえは危険な目に合うかもしれない。だが、とても手放すなんて出来ない…。すまない、凛…」

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