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第103話 宝石のような煌めく時間

今は少し陽が陰った時間帯で、かなり冷える。 俺は紺のダッフルコートに白のマフラーで口元を隠して、壁に凭れながら改札口から出て来る人を眺めていた。 ふと、顔に影が差して銀ちゃんが来たのかと振り仰ぐと、見知らぬ若い男が俺を覗き込んでいた。 「な、なんですか?」 「君、1人?可愛いね。俺とご飯食べに行かない?」 「え?いや、いいです。待ち合わせしてるんで…」 ーーなんだ?俺、男なんだけど。もしかしてナンパ? 俺は男に断ると、その場を離れようとした。すると、男が俺の腕を掴んで引き止めようとする。 「あ、待ってよ。いいじゃん、俺といると楽しいよ?ちょっとだけでいいからさ」 「しつこっ。あの、俺は男なんですけど。離して下さい」 「え?あれ、ほんとだっ。へぇ〜、でも君、俺の超タイプ。男でも別にいいよ。ほら、行こうよ」 ぐいぐいと強く腕を引っ張られて、引きずられそうになったその時、俺の大好きな匂いがして、後ろからふわりと抱きしめられた。 俺は、ほうっと安堵の息を吐くと、顔を上げて愛しい名前を呼ぶ。 「銀ちゃん…遅いよ」 「待たせて悪かった。君、手を離してくれるかな」 銀ちゃんが、俺の腕を掴んでる男の手を軽く掴むと、男は小さく悲鳴を上げて手を離した。 「いてぇ…っ、あんた誰だよ?」 「君に教える必要はない。よくも汚い手でこの子に触ってくれたな。どうしてやろうか…」 「ひっ…!あ、あのっ、すいませんでしたっ」 銀ちゃんの人を射殺しそうな冷たい目に睨まれて、男の人は一目散に逃げて行った。 「銀ちゃん…」 「ん?」 俺が声をかけると、瞬時に甘い表情に切り替えて俺を見る。 「ふふ、助けてくれてありがと。ね、早く行こ」 「そうだな。ここにいると、また凛に声をかける奴が出て来る」 ーーいや、さっきのはたまたまで、俺に声かける奴なんていないよ…。 そう思ったけど、銀ちゃんは聞きそうになかったから、俺は黙って促されるまま歩き出した。

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