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第104話 宝石のような煌めく時間

歩き出してすぐに、当たり前のように銀ちゃんが俺の手を握る。その暖かい大きな手に、俺の胸がきゅんと鳴った。 でも、俺は嬉しいけど、こんな人通りの多い所で、男同士で手を繋ぐのは気にならないんだろうか…。 「ねぇ銀ちゃん、これ…誰かに見られてもいいの?」 「ん?ああ、構わない。それに、俺が繋いでいたいんだ。駄目か?」 「俺も繋ぎたいからいいけど、変な目で見られないかな」 「大丈夫だと思うぞ。こんな事を言うとおまえは嫌がるかもしれないが、今みたいに口を隠してると、おまえは色が白くて目が大きいから、女の子に見えなくもない…。しかもかなり可愛い…。さっきからすれ違う男どもがおまえを見てるだろう?だから、余計に手を離したくない」 銀ちゃんの言葉の中に独占欲を感じて嬉しい。でも…。 「俺…普通だと思うんだけど。それに、すれ違う人が見てるのは銀ちゃんの方だよ。だって、相変わらずかっこよくてずるい…」 俺は、少し拗ねて下を向く。 今日の銀ちゃんは、黒のチェスターコートに紺のマフラーを巻いて、いつもは無造作な髪を綺麗にセットしている。普段でもモデル並みにスラリとしてかっこいいのに、今日なんて、どんなイケメンな俳優さんでも敵わないぐらいにかっこいい。そりゃあ、皆んな振り向くに決まってる。 銀ちゃんが、俺の肩をそっと抱いて自分の胸に寄せた。銀ちゃんの濃い匂いに包まれて、一瞬で俺の頭はとろりと蕩ける。 「凛…妬いてくれてるのか?俺は、他の誰にかっこいいと言われても、何も感じない。おまえだけが、そう思ってくれたらそれで満足だ。ほら…どうなんだ?凛…」 「銀ちゃんは、世界一かっこいいよ…。もうっ、あんまりモテないで…」 ん?と顔を覗き込まれて、俺は銀ちゃんと目を合わせる。理不尽に怒る俺に笑って、ちゅっと俺の唇に口付けた。 周りから起こった小さな騒めきに、俺は恥ずかしくなって銀ちゃんの胸に顔を埋めて隠れる。 ーーひ、人前でちゅうしたっ。ただでさえ、注目浴びてるのに何してんのっ、もう! 俺がぷるぷると肩を震わせてると、銀ちゃんは何事もなかったかのように俺を離してもう一度手を繋ぎ、とても軽やかな足取りで歩き出した。

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