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第117話 乱入者

俺達が談笑していると、縁側に面した廊下から、ばたばたと複数の足音と誰かを制する声が聞こえてきた。 何事かと部屋にいた全員が縁側の障子に目を向ける。 足音が障子の前で止まり、障子が勢いよく両側へと開かれた。そこには、俺が最も会いたくなかった鉄さんの姿があった。 綺麗な鼠色の着物を着た鉄さんが、織部さんを従えて俺と銀ちゃんが座る椅子の後ろに立つ。 銀ちゃんが、すぐに顔を元に戻して低い声を出した。 「くろ…、何をしに来た。よく皆の前に顔を出せたな」 「久しぶりに会ったのに、その言葉はひどいなぁ〜。おじさんおばさん、ご無沙汰してます。…父さんも…」 縹さんと紫さんも、渋い顔をして鉄さんを見る。 「鉄、今までどこにいた。それよりもまず、言う事があるだろう」 「そうですね…。夏にしろを傷付けた事を謝ります。しろ…ごめんね。もうあんな事はしないよ」 鉄さんの姿を目にした瞬間、怯えて俯いていた俺は、ちらりと横目で様子を窺う。鉄さんは、銀ちゃんに顔を寄せて薄っすらと笑っていた。 「銀の怪我なんてすぐに治ったからいいのよ。それよりも凛ちゃんにした事を反省してるの?凛ちゃんは、死んでてもおかしくなかったのよ?」 口元に笑みを浮かべたまま、鉄さんがすっと身体を起こした。しかし、その目は少しも笑ってはいなかった。 「ええ…。僕もその事はとても後悔してます。なぜ、とどめを刺しておかなかったんだろうってね…」 「くろっっ!」 黙って聞いていた銀ちゃんが、叫ぶと同時に大きく音を立てて立ち上がり、鉄さんの着物の襟を掴んだ。 「おまえ…っ、まだそんな事を言ってるのかっ」 鉄さんは口元の笑みを崩さずに、銀ちゃんの手首を握って襟から引き剥がす。 「もう…、短気だなぁ。しろも、ここにいる皆んなも、僕の話を聞いたら納得すると思うよ。僕が凛くんにした事は、正しかったんだってね。だって、僕らにとって凛くんは、危険な存在なんだよ。僕は、信州で危うく凛くんに殺されそうになったんだから…」

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