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第118話 乱入者
「うそだっ!」
今度は俺が怒りに震えて立ち上がり、鉄さんに向かって叫んだ。
「何言ってっ…!あの時、俺を殺そうとしたのは鉄さんの方じゃないかっ。俺はただ、ばあちゃんが教えてくれた魔除けだと言う魔法の言葉を必死で唱えただけだっ」
銀ちゃんが驚いて、俺の腕を掴んで聞いてくる。
「待てっ!凛…あの時、くろに襲われてたのか?なぜ、黙っていたっ」
「う…っ、ごめん…。だって、銀ちゃんが兄弟みたいに大事に思ってる鉄さんが、また俺を殺そうとしたなんて言ったら、銀ちゃんが傷付くと思ったんだ…」
銀ちゃんに怒られたと思った俺は、鉄さんに対する怒りと銀ちゃんに対する悲しさで、涙を溢れさせた。
「凛…、怒鳴って悪かった…。でも、おまえがどんな危険な目に遭ったのかは、隠さずにちゃんと話して欲しい…」
「うん…、ごめんね…」
銀ちゃんが、俺の頭を胸に抱き寄せる。大好きな銀ちゃんの匂いに気持ちを落ち着かせてると、鉄さんの悪意に満ちた言葉が聞こえ、また嫌な気持ちが湧いてきた。
「ああ、そうだったね。今度こそ息の根を止めてやろうと、真白に殺すように頼んだんだった。ふふ…でも返り討ちにあっちゃった。ねぇしろ、なぜだかわかる?」
「知るか、早く言え」
銀ちゃんが、鉄さんを睨んで吐き捨てる。
「凛くんがさっき話してた魔除けの魔法だとか言う言葉。あれ、陰陽師の退魔の呪文だよ」
鉄さんがそう言うと、一瞬にしてざわめきが起こり、銀ちゃん以外の全員の視線が俺に突き刺さった気がした。
「…だからどうした。そんなもの、凛に使えるわけがないだろ」
「あはっ、それが使えたんだよねぇ。実際、俺と真白は身体が痺れて動けなくなった。まあ、30分ほどで動けるようになったから、それほど効いたわけではないみたいだけど。ねぇ、凛くん、おばあさんに教えてもらったと言ってたよね。おばあさんの名前は何て言うの?」
「え…、小春…、椹木 小春…です」
「違うよ。椹木になる前の、元の名前の事だよ」
「えと、確か…賀茂…」
「「賀茂っ!」」
部屋にいる何人かが、大きな声を上げた。
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