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第121話 2人の想い

銀ちゃんの部屋から荷物を取って、すぐに家に帰ってきた。 帰路に着く間、銀ちゃんはずっと無言だった。でも俺を支える腕がとても力強くて、さっきの出来事で冷えた俺の心が、少しずつ温かくなってゆく気がした。 家に着いて玄関に上がるなり荷物を放り出して、銀ちゃんは俺を強く抱きしめてきた。 俺も、もっと強く銀ちゃんの温もりと匂いを感じたくて、必死にしがみ付く。 銀ちゃんは、俺を安心させるように何度も名前を呼んで背中を撫でた。 俺は先ほどの出来事に身体を震わせながら、銀ちゃんの啖呵を思い出して呟いた。 「ふ…ふふ、銀ちゃんって本気で怒ると口が悪くなるんだねぇ。俺、何回か怒られた事があったと思ったけど、あんなの、怒ってる内に入んないね…」 「ん?怒った事あったか?俺がおまえを怒れるわけないだろ。こんなに愛しく思ってるのに…。凛、心配するな。俺は決しておまえを放さない」 「うん、俺も絶対に離れないよ」 お互い、そっと身体を離して見つめ合う。 どちらからともなく顔を近付けて、キスをする。 ちゅっちゅと音を鳴らしながら啄んで、もう一度見つめ合うと、今度は強く唇を押し付けて激しく貪り合った。 銀ちゃんがきつく俺を抱き寄せ、身体を密着させる。 俺は、夢中で口の中を動き回る舌を追いかけて絡める。もっと、と銀ちゃんの舌を強く吸って、流れ込んできた唾液を飲み込んだ。 「ふぁ…、ふぅ、んっ」 いつものように、頭も身体もとろりと蕩けて気持ちがいい。こんな風になるのは銀ちゃんだからだ。他の人とキスした事ないからわかんないけど…。でも、きっとそう。 俺はふと、先ほど言われた事を思い出して悲しくなり、目尻から涙をぽろりと零した。 「ふ…っ、う…、お、俺は…そんなに、駄目なの…?ばあちゃんの家がどうとか…知らない。ばあちゃん…何も、言ってなかった…っ。ただ、銀ちゃんに会いに行く時に…もし、悪い妖にあったら…追い払う、魔法の…言葉だって…。ぐすっ…、俺…殺されそうになって、自分でなんとかしなきゃ…って、必死で思い出して唱えてた…。ほんとに効くなんて、思わなかった…っ」 ぽろぽろと涙を流して、必死で銀ちゃんに訴える。 ほんとに知らなかったんだ。ただのおまじないだとしても、俺は殺されると思ってそれに縋り付くしかなかったんだ。必死だったんだ。 あの時、俺は、抗うべきじゃなかったのだろうか…。

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