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第122話 2人の想い

銀ちゃんが両手で俺の頰を挟み顔を覗き込む。 「凛…、俺は凛の唱えた術が効いたのだとしたら、それで良かったと思ってる。でなければ、凛は死んでいたかもしれない…。おまえの祖母に感謝だな。よくぞ、教えてくれていた。凛、おまえは何も引け目を感じる事はない。ただ俺の事だけを考えてろ…な?」 銀ちゃんは本当に優しい。俺の瞳からとめどなく零れ落ちる涙を、銀ちゃんが熱い唇で吸っていく。 俺は我慢出来なくなって、声を上げて泣き出した。 「うわぁんっ、銀ちゃん…っ、銀ちゃんと離れたくないようっ。俺…っ、もう二度とあの言葉を言わないからっ、だから俺を放さないでっ、ふっ…うっ、ぐすっ」 「凛、凛、もう泣くな…。おまえが泣くとどうすればいいかわからなくなる…。俺はずっと傍にいる。大丈夫だから、泣くな…」 俺を胸にかき抱き、耳元で優しく囁く。銀ちゃんの甘く低い声に、俺の泣き声はだんだんと小さくなっていき、しばらくすると、すんすんと鼻を鳴らして銀ちゃんの胸に顔を押し付けた。 「落ち着いたか?」 「…ずっ、ひく…っ。ん、銀ちゃん…好き…」 「ふっ、知ってる。凛、愛してるぞ」 「うん…よく知ってる…」 銀ちゃんを見上げてふわりと笑う。銀ちゃんも甘い顔をして俺を見つめた。 「おまえ…瞼も鼻も赤くして…。ほんとに可愛いな。もう大丈夫か、ん?」 「大丈夫じゃない…。だからもっとぎゅっとして。俺を銀ちゃんでいっぱいにして。俺…銀ちゃんと一つになりたい…」 「俺も凛が欲しい。俺は、おまえの甘い匂いを嗅ぐと堪らなくなるんだ…。早くおまえの中に入りたい。本当に…愛しくて堪らない」 そしてまた、ゆっくりと唇を合わせる。 ーー俺はもう、銀ちゃんのいない世界は考えられないよ。どうか、俺から銀ちゃんを取らないでーー。 その日、胸に燻る不安を打ち消すように、俺達は何度も求め合い、何度も何度も抱き合った。

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