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第123話 怖い夢
俺は真っ白な世界をふらふらと彷徨っていた。周りの空気は冷たく、寒さで身体が震える。
『凛』と俺を呼ぶ声が聞こえて振り向く。銀ちゃんの姿を見つけて駆け寄ろうとすると、銀ちゃんの隣に誰か立っているのに気付いた。ぼやけてよくわからないけど女の人のようだ。
『凛、俺はもうおまえとは一緒にいれない。悪いな。俺は新しく契約し直して、こいつと生きてくよ』
銀ちゃんがそう言って、隣の女の人に微笑みかけた。そして、その人の肩を抱いて俺の元から去って行く。
俺はあまりのショックに動けなくて、ただ2人が立ち去るのを、涙を流してぼやける瞳で見ていたーー。
「凛、凛、どうした?」
肩を揺すられて、はっと目を開ける。目の前に銀ちゃんの顔が見えた。俺は両手を伸ばして銀ちゃんの首にしがみ付く。銀ちゃんの匂いを吸い込んで、やっと安堵の吐息を吐いた。
「怖い夢でも見たのか?」
「うん…。銀ちゃんがね…俺から離れて知らない女の人とどっか行っちゃった…っ。ぐす…、追いかけたいのに動けなくて…俺、見てるだけで…。すごく悲しかったっ。銀ちゃん、俺から離れたらやだぁ…っ」
ぐずぐずと鼻を鳴らす俺を抱きしめ、背中を撫でながら銀ちゃんが優しく囁く。
「夢の中の俺は阿呆だな。殴り飛ばしてやりたい。夢の中とはいえ、不安にさせて悪かったな…。だが俺の方こそいつも願ってる…ずっと傍にいてくれと。凛、俺から離れるなよ。俺もおまえが離れたら嫌だ…」
「ふぅ…っ、夢で、良かったっ。銀ちゃん…寒いからもっとぎゅっとして…」
「おまえは寝相も可愛いからな。布団からはみ出してるから、身体が冷えたんだ。ほら、もっと引っ付け。風邪ひくなよ?」
「…ん、はぁ…あったかい」
銀ちゃんの腕の中はいつもあったかくて、さっきまでの不安がすーっと消えていくのを感じた。
昨日からずっと、俺の心が不安定になってるようだ。ちょっとした事ですぐに涙が出てしまう。ましてや、あんな夢を見るなんて…。
俺の愛する人の大事な家族や仲間に、いきなり反対されたのがとてもショックだった。いや…あれは反対というよりも拒絶と言うのだろうか…。
どうすれば認めてもらえる?認めてもらう為なら何だってするのに。絶対に、銀ちゃんと離れるのだけは嫌だ。
でも、銀ちゃんだって大事な家族を突き放して俺と一緒に戻って来たから辛いはずだ。だから俺ばっかりぐずぐず泣いて落ち込んでたら駄目だ。しっかりしないと…。
俺は銀ちゃんの胸に顔を擦り付けると、一度深呼吸をしてから顔を上げた。
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