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第126話 帰る約束

翌朝、俺が銀ちゃんの膝の上で遅めの朝食を食べてるところへ、浅葱が訪ねてきた。 銀ちゃんにくっ付いて玄関に出て来た俺を見て、浅葱が驚いた顔をした。 居間に入ってからは、当たり前のように銀ちゃんの膝の上に座る俺に、浅葱はますます目を見開いて驚きの声を上げた。 「えっ?凛はどうしちゃったの?」 「一昨日からずっとこうだ。あんな事があったから不安になってるんだ。ふふ、可愛いだろ?」 「はあ…、まあ可愛いですけど…。凛、大丈夫?」 「大丈夫…。銀ちゃんが傍にいればだけど…」 「…うん、そっか…」 俺を見て、眉尻を下げ困った様子の浅葱に、銀ちゃんが尋ねる。 「浅葱、用があって来たんじゃないのか?」 「はあ、まあそうなんですが。困ったな…。でもきつく命令されてるしな…」 「なんだ。いいから言え」 「はい。あのですね銀様、『今一度、郷に戻って話し合いをするように』と縹様が仰ってます。俺は必ず連れて戻るように命令されて来たんです。凛には悪いけど、どうか郷に戻って下さい」 「無理だな。こんな状態の凛を1人置いていけない」 銀ちゃんが上から俺を覗き込んで、こめかみに唇を付ける。 「でも、今日は各地から八大天狗がいらっしゃる日ですよ?銀様がいないのは失礼になります。それにもし郷に戻らないのなら、こちらの家に皆んなで押し掛けると仰ってますが…」 「はあっ?ふざけた事を言いやがってっ!……ちっ、仕方がない…。だが郷に凛を連れて行くわけには行かないしな…」 「そうですね…。じゃあ俺が凛と一緒に留守番してます。それならいいでしょ?ね、凛も俺と待ってようよ」 「…うん…。銀ちゃん…俺、浅葱と待ってるから行って来て…?でも、出来るだけ早く帰って来てね?」 俺は身体の向きを変えて銀ちゃんに抱きつき、逞しい胸に顔を押し当てて言った。 銀ちゃんが、俺の髪にキスを落として背中を何度も撫でる。 「…わかった。なるべく早く帰って来るよ。のんびりと休みながら待ってろ。寂しいからって浅葱に抱きつくんじゃないぞ?浅葱も、凛を頼んだぞ」 「はいっ。しっかりと凛を守りますっ。気をつけて行ってらっしゃいませ!」 手を頭の横に当て、敬礼するようにして大きな声を上げる浅葱を無視して、銀ちゃんが俺の頰を両手で包んだ。 「凛、行ってくる。心配だから、家で大人しく待っててくれよ」 「うん、待ってる。銀ちゃんも気をつけてね…」 俺は、もうすでに泣きそうになるのをぐっと堪える。銀ちゃんがそんな俺を見てふっと目を細めると、そっと唇を合わせてきた。何度か柔らかく食んでから、俺を胸に抱き寄せた。 すると横から咳払いが聞こえてきて、「あの〜そろそろ…」と浅葱が遠慮がちに銀ちゃんを促した。 銀ちゃんは大きく溜め息を吐くと、もう一度、俺の唇に口付けてから、そっと身体を離した。

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