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第129話 帰る約束

俺は銀ちゃんの部屋で、銀ちゃんの布団に包まって朝を迎えた。時々、うつらうつらと微睡みはしたけど、不安に胸が押し潰されそうで、とても眠る事なんて出来なかった。 昨日の夕方に、浅葱は天狗の郷に戻っていった。 「とりあえず、俺も郷に戻って銀様の様子を見て来るよ。凛は連れて行けないから待っててくれる?1人でも大丈夫?」 「うん…俺は大丈夫だから、銀ちゃんがどうしてるのか見て来て。銀ちゃんに早く帰って来て欲しいって伝えて。お願い…」 「ん、わかった。凛、ちゃんと戸締りして家から出ちゃ駄目だよ」 「うん。気をつけて」 俺は、浅葱が出て行った後すぐに銀ちゃんの部屋へ行き、銀ちゃんの布団を敷いて、俺とお揃いの銀ちゃんのパジャマを抱きしめて布団の中に潜り込んだ。 ーー銀ちゃんはどうしたんだろう…。話し合いが長引いてるのかな、それとも疲れが溜まって倒れたりしてるのかな…。あるいは、帰りに何かあって怪我とかしてるのかも…。 そんな事ばかり一晩中考えていた。 でも、今日こそは帰って来るかもしれない。だったら俺は元気な姿を見せないと駄目だ。でないと銀ちゃんは俺の事を心配して、これからどこにも行けなくなってしまう。 俺は重い頭と身体を起こして、ずっと抱きしめていた銀ちゃんの匂いの染み付いたパジャマを、綺麗に畳んだ。 布団も片付けて顔を洗い、朝食を食べようとした。 昨日、浅葱の話を聞いて、ちゃんと食べるつもりで座ったのだけど、胸がつかえてどうしても喉を通っていかない。仕方なく、温かいカフェオレだけを飲んだ。 歯を磨いてからは、何もする気が起きなくて、じっと玄関に座り込んでいた。 玄関扉のガラス部分に、銀ちゃんの姿が見えないかと凝視する。 暖房器具も何もない玄関は、冷えてとても寒かった。きっと身体は冷たくなってるはずなんだけど、俺はまったく気にならない。ただ、不安で不安で胸が苦しくて、冷える自分の身体をぎゅっと抱きしめていた。 どれくらいそうしていたのか、ふいに玄関扉のガラス部分に人影が見えた。 俺は急いで扉に駆け寄り勢いよく開ける。 「うわっ!ど、どうしたのっ?」 そこにいたのは、元旦の日以来に会う清忠だった。

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