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第130話 帰る約束
「あ……、きよ…」
清忠を見て明らかに落ち込み、俺は家の中へ戻る。俺の後に続いて清忠が入って来て、玄関扉を閉めた。
「凛ちゃん、どうしたの?何かあった?」
俺は、玄関を上がって居間へ向かおうとしていた足を止める。そして俯いて小さな声を出した。
「銀ちゃんがね…、郷から帰って来ない…」
「え?だって俺と倉橋の所に行った次の日に、2人で郷に行ったんだろ?そのまま帰って来てないの?」
清忠も玄関を上がり、俺の隣に並んだ。
「一緒に帰って来たよ…。でもまた銀ちゃんだけ呼ばれて行ったんだ。すぐ帰って来るって、言ったのに…帰って来ない…っ。どうしよう…清っ…」
「ちょっ、ちょっと、どうしちゃったの?そのうち帰って来るだろ?なんでそんな顔してんの?顔色悪過ぎだよっ。それに、ふらふらしてるし…。ほら、こっち来て休も」
悲愴な顔の俺を見て、清忠が驚く。
清忠は、俺の肩を抱いて居間に入り、座布団を枕に俺の身体をコタツに押し込む。そしてコタツ布団を俺の肩まで掛けて、コタツのスイッチを入れた。
「凛ちゃん、いつからあそこにいたんだよ…。身体がびっくりするぐらい冷たいじゃん…。一ノ瀬さんは普通に郷に行ってるだけじゃねぇの?何かあった?」
清忠の優しい声に、涙が溢れそうになるのを唇を噛んで堪える。そして、銀ちゃんと一緒に郷に行った日の事を、清忠に話した。
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