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第131話 大切な友達

俺の話を聞き終えて、清忠が難しい表情で天井を仰ぐ。 腕組みをして「う〜ん」と唸る清忠に、俺の不安な気持ちが増した。 「清…、清も俺から離れる?俺のこと、憎いと思う?」 力なく吐き出された俺の言葉に、清忠は目を見開いて声を荒げた。 「はあっ?何言ってんだよっ!俺が凛ちゃんから離れるわけないだろっ。大事な友達なんだから!憎いなんて思わない。むしろ、大好きだっ!」 「清……ありがと…」 清忠も浅葱と同じ事を言ってくれた。俺の目の奥が熱くなり、堪えていた涙がぽろりと零れ落ちた。 「まあ、俺ら妖狐も陰陽師とは少なからず因縁がある。陰陽師に消された妖狐もいる。けど、逆に妖狐に殺された陰陽師もいるんだから、お互い様じゃね?それを現在までずるずると引きずって、ぐちゃぐちゃ言ってる天狗族もどうかと思うけどな。それに、凛ちゃんのばあちゃんが陰陽師の家系だったとしても、凛ちゃんには関係なくない?と、俺は思うよ…。なあ凛ちゃん、その術とかいうの、一回俺にかけてみてよ」 「えっ!そんなの嫌だよ…。もし清に何かあったらどうすんだよ…」 「大丈夫だってっ。だって、その鉄とか言う奴も、ちょっと痺れただけだって言ってたんだろ?効いたとしても大した事ないって。お願いっ。ちょっとやってみて?」 「…もうっ、知らないからな…」 清忠の突拍子も無い頼みに、俺はのろのろと身体を起こすと、渋りながらも信州のあの時のように、指を組み術を唱えた。 術を唱え終わり、清忠を見る。清忠はキョトンとして「え、終わり?」と聞いてきたので、俺は小さく頷いた。 清忠は、しばらく顔を動かしたり腕を回したりしていたけど、俺を見て明るい声を出した。 「何だよっ、どうなるのかと、ちょっとどきどきしちゃったじゃん!全然何ともないんだけど。効いてないよ、これ。…たぶん、普段はそんな力があるわけじゃないのに、信州の時は殺されそうになってたから、もしかしたら効いたのかもしれないな。ほんと、こんな普通の人間の凛ちゃんを、何で遠ざけようとするのかわかんないわ…」 優しく俺の髪を撫でて笑う清忠に、俺は少しだけほっとする。 ーーそっか、良かった。俺に妖を傷付けるような力がなくて。でも、例え自分の命が危なくなったとしても、もう二度と言わない。だから、銀ちゃん戻って来てーー。 俺は心の中でそう決意して、頷くように瞬きをする。また一つ、目尻に溜まっていた涙がぽろりと流れ落ちた。

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