132 / 287
第132話 大切な友達
もう一度、俺をコタツに寝かせて清忠が聞いてくる。
「なあ、一ノ瀬さんはすぐ帰って来るって言ったんだろ?『凛ちゃん命!』のあの人が、こんな何日も凛ちゃんを放っておくのはあり得ないんだよなぁ。俺が思うには、郷から出れないように、他の天狗に閉じ込められたりしてるんじゃないかな?」
「でも、銀ちゃんは郷の中でも一番か二番くらいに強いはずだよ?閉じ込められたりするかな…」
清忠が、顎を指で挟んで難しい顔をする。
「う〜ん…。そもそも、凛ちゃんとの事を反対されてる郷になんで1人で戻ったんだよ?」
「何か八大天狗?とかいう人達が来るから、って浅葱が言ってた。郷に戻って来ないなら、その人達をここに来させるって聞いて、渋々出かけたんだ…」
清忠が、ぽんっと両手を叩いて俺を指差した。
「八大天狗!それだよっ。一ノ瀬さんがどんなに強くても、八大天狗全員にかかられたら身動き取れないよっ。凛ちゃん、一ノ瀬さんは帰りたいのに、帰れなくなってるんだよ。きっと今頃、凛ちゃんの所へ帰る為に必死になってると思う。俺は、一族の中で天狗の知り合いがいる奴に、天狗の郷で何が起こってるか探ってもらうわ。凛ちゃんは一ノ瀬さんを信じて待ってな。」
「そっか…うん…。清、ありがと。俺…もしかして銀ちゃんは、俺の事もういらないのかなって、ちょっと不安になってたけど、なんか元気が出てきたよ…」
「はあ?一ノ瀬さんが凛ちゃんをいらないと思うなんて、絶対にないっ!あの人の凛ちゃんへの執着はすごいよ?怖いよ?まあ、今は1人で不安になるのも仕方ないけど、信じて待ってようよ、な?」
清忠の力強い言葉に、俺の沈んだ気持ちが浮上する。
ーーそうだ。清の言う通り、銀ちゃんは郷から出れないのかもしれない。俺の味方だと言った浅葱も、同じように出れなくなってしまったのかもしれない。俺の足では郷には行けないのだから、銀ちゃんを信じて待つしかない。もしかして、時間はかかるかもしれないけど…。あんなにヤキモチ焼きの銀ちゃんが、俺をずっと1人にはしないはずだ……。
今までにあった数々の、俺を独占しようとする銀ちゃんの言動を思い出して、くすりと笑いが漏れる。
それと同時に銀ちゃんが恋しくなり、俺の胸が締めつけられてかすかに眉をひそめた。
ともだちにシェアしよう!