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第136話 壊れる心
俺は、自分の身体を強く抱きしめる。
ふと両手に違和感を感じて見ると、包帯が巻かれていた。それを見て「ああ…」と思い返す。
清忠と宗忠さんには、迷惑をかけてしまった。宗忠さんは、天狗の郷の事を教えてくれただけなのに、怒鳴ってしまった。また今度、謝らないと…。
包帯の巻かれた手をじっと見つめてから顔を覆う。しばらくそうしていると、ばたばたと慌てる足音がして清忠が飛び込んで来た。
「凛ちゃん!良かった…っ。コタツにいないから、どこに行ったかと心配したよ?ほら、ご飯が出来たから食べよ」
俺をぎゅっと抱きしめて頭を撫でる。今日は清忠に迷惑をかけてばかりだな、と申し訳なくなって、俺は素直に頷いた。
俺があんまり食欲なさそうだからと、うどんを作ってくれていた。全部は食べれなかったけど、最近にしては食べた方だと思う。
お風呂に入った後には、あたたかいココアも入れてくれた。そして、心配だから泊まると言う。
「凛ちゃんはここがいいだろ?」と清忠が、銀ちゃんの部屋に布団を敷いた。
「本当は凛ちゃんの隣で寝たいけど、一ノ瀬さんの部屋に俺がいると、俺の匂いが残っちゃうからな…。でも凛ちゃんの近くにいたいから俺はコタツで寝るよ」
そう言って、俺を布団に寝かせると、「何かあったらすぐ呼んで。おやすみ」と電気を消して出て行った。
今日は、心がひどく疲れた。瞼を閉じると、いつもの短い睡眠が訪れる。少しでも長く眠れるようにと静かに息を吐き出したその時、身体に異変が起きた。
どくんと心臓が跳ねて、胸の印から熱が広がる。俺は胸を押さえると、身体を横に向けて丸まった。胸の印から広がる熱がだんだんと痺れを伴い、身体の奥を疼かせる。
ーーな、なにこれ…っ。身体が熱いっ。あ…なんか、へんだ…っ。
周りの空気はひんやりと冷たいのに、俺の身体には汗が浮かび始めていた。
俺は、はあはあと短く息を吐いて、熱くなる身体をぎゅっと抱きしめた。
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