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第145話 鉄side

学校でのしろの成績は素晴らしかった。 同学年はもちろん、年の近い学年の中でも、学問も術も体術もすべて、飛び抜けて優れていた。 僕もしろに置いて行かれないように必死に頑張って、なんとか学年10番以内の成績を保っていた。 そこで約8年学んで、しろは人間界にあるレベルの高い大学に進んだ。僕も同じ所に行きたかったけど僕では難しく、渋々別の大学へ進学した。 しろは1年間、大学近くの一ノ瀬家が所有するマンションから通っていた。だけど2年になる直前に、大学から少し離れた場所へ引っ越した。 僕は、便利なマンションからなぜ引っ越すのか疑問に思った。だから、春休みに郷で会った時に、しろに聞いてみた。 「しろ、なぜわざわざ大学から遠い場所に引っ越したの?」 「ああ…おまえにまだ話してなかったな。俺には、子供の頃に結婚の契約を交わした相手がいる。その子は遠くに行ってたんだけどな、この3月からこっちに戻って来たんだ。だからその子と一緒に住む為に引っ越しをした」 照れ臭そうに話すしろの言葉に、僕は衝撃を受けた。 ーー結婚の契約なんていつしたんだ?しかも一緒に住むだって?そんな…。 しろの嬉しそうな顔を見て、僕は何も言えなくなる。第一、僕に反対する権利なんてないんだから。 僕はショックのあまり、ふらふらと当てもなく郷の外に向かって歩いていたみたいで、いつの間にか山の中にまで来ていた。 今、しろの顔を見てしまったら、問い詰めて情けない姿を見せてしまいそうだ。だから、もう少し落ち着いてから戻ろうとゆっくり歩いていた。 この時に、他の妖族と喧嘩をして、怪我して動けずに困っていた真白を助けた。 この時から、真白は僕を『命の恩人だ』と言って慕ってくるようになる。 僕は内心『面倒臭い奴…』と思ったけど、いずれは役に立つかもしれないと、うわべだけ仲良くする事にした。 しろに衝撃の告白を聞いた日から数日経って、気持ちが落ち着いて来た頃に、また郷に戻って来ていたしろから、再び衝撃な話を聞く。 結婚の契約をした相手が男だったらしい。 僕は、今度はショックよりも怒りがふつふつと湧いてきた。 ーーはあ?男?しろは次期当主になるのだから、当然後継ぎが必要だ。だから、いずれは結婚するのも仕方がないと納得していたのに…。子供の生めない男なら、そんな奴はいらない。僕が傍にいれば充分だ…っ。 僕は見た事もないしろの契約相手に、じわじわと憎しみを募らせていった。

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