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第148話 鉄side

結局、あの後戻って来た2人は、喧嘩別れするどころか、お互いの気持ちを確認し合って、もう一度、結婚の約束をしたようだった。 どうやら僕は、余計な事をしてしまったらしい。中途半端な作戦では駄目だ。やはり凛を消して、しろに諦めさせるしかないか…。 翌日に婚約のお祝いだと言って、2人を僕の別荘に呼び出した。 凛にでれでれして気の抜けているしろと、しろを崇拝している浅葱に、薬入りの酒を飲ませた。しろは鋭いからバレやしないかとどきどきしたが、浮かれて油断しているしろは、気付かなかったようだ。 薬の効き目が遅くてイライラしたけど、帰る頃になってようやく倒れたしろを見て、僕の気分が高揚し出す。 ーーしろ、今から目障りな凛を殺してあげる。凛がいなくなったら、きっと目が覚めるよ。 そして、僕は凛に向かって短刀を振り下ろした。 その直後、薬でとても動けるような状態ではないのに、しろが凛を抱えて庭へと飛んで逃げた。僕が振り下ろした短刀は、凛ではなく凛を庇ったしろを傷付けた。 必死になって凛を庇うしろにイライラした。だから、僕はしろを刺した。本当はそんな事するつもりはなかったのに…。 だけどそれを見た凛が、素直に崖から落ちる方を選んでくれたから、結果的には良かった。落ちる前にぐちゃぐちゃと何か言ってたから、繋がれた2人の手を、術で強引に引き離してやった。 落ちて行く凛の顔を見て、僕の胸の奥がつきんと痛んだ。 ーー何だこれ…。気持ち悪い。たぶん、あれだ。落ちる凛の顔が怯えたものではなく、あいつの名前のように凛としていたから気に入らないんだ。 凛の姿が暗い谷底に消えて見えなくなると、僕は、固まって動かなくなったしろから離れて家に入り、あらかじめ用意していた荷物を持って、郷を出た。 さすがにお咎めをくらうだろうから、しばらく郷を離れるつもりだった。他の天狗の郷に行くとすぐに見つけられてしまう。だから、こういう時の為に仲良くしておいた真白の所へ行く事にした。

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