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第161話 怒りの矛先

俺は、身体の底から力が湧いて来るのを感じた。 ーー鉄さんに聞いても、はっきりとは教えてもらえなかったけど、やっぱり銀ちゃんは、郷から出れなくなっていたんだ。銀ちゃん…誰とも口を聞かないで、目も合わせないで、何を考えてたの?俺の事?俺が、ずっと銀ちゃんの事ばかり考えていたように…。 そう思うと嬉しいけれど、銀ちゃんが心配にもなる。監禁と僧正は言ったけど、ひどい事はされてないんだろうか?それに、浅葱も同じように、監禁されてるのだろうか? 俺が黙って考え込んでしまったからか、僧正がイラついて俺の腕を捻り上げた。 「やっ、痛い…っ!あ…っ、やめ…」 「おいっ、ちゃんと聞いてるのかっ?俺にはおまえを殺す理由がある、つってんだろうが!なあ、賀茂の子孫さんよ。おまえも聞いてるだろ?天狗と賀茂の話。昔、賀茂の陰陽師に殺された天狗は、俺の先祖なんだよっ!俺はな、賀茂の人間に会ったら殺してやろうと、ずっと思っていた。今や天狗も腑抜けになって、人間に手を出すなと言われていたが、もうそんな事は関係ねえ!まあ、恨むなら銀を恨め。あいつがさっさと俺の妹との婚儀を了承してれば、もうしばらくは、生かしといてやったのにな…」 僧正が、右手で俺の腕を捻り上げたまま、左手で腰に下げていた刀を抜いた。そして、切っ先を俺の胸にピタリと当てる。 「ほら、陰陽師の呪文とやらを唱えたらどうだ?」 口の端を吊り上げて冷笑する僧正を、俺は腕の痛みを堪えて睨みつける。 「そ、そんなの言わないっ。お、俺は、もう二度と使わないって決めたんだ!それに、俺は人でも天狗でも傷付けたりはしないっ。そもそも、最初に天狗が人間を殺したから賀茂の陰陽師が成敗したって話じゃないかっ。それなのに、いつまでも恨むのはおかしいよ。それに、銀ちゃんの花嫁は俺なんだから、他の人との婚儀なんて、銀ちゃんは承諾しない…っ」 「あ?人間ごときが何偉そうに言ってんだ。おまえらより上級の天狗に楯突こうってのかっ?おまえ…ほんっとムカつく…」 「ちっ」と舌打ちをして、刀が下に降ろされる。それを見て、ほっと息を吐いた次の瞬間、俺の太ももに刀が突き刺さった。

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