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第178話 幸福

「凛?」 銀ちゃんがとても困った顔をして、後ろから俺を覗き込む。俺は、お腹に回された腕に手を置いて、銀ちゃんに笑って見せた。 「俺さ、銀ちゃんに翼があってもなくても大好きだよ。でも、もし治せるものなら、銀色の翼が元通りになって欲しい。だって、銀ちゃんは『平気だ』って言うけど、今までずっとあった大事なものが無いのは辛いでしょ?俺は、足の傷をすぐ治してもらったけど、銀ちゃんの翼をすぐに治してあげれないし…。そもそも、本当に俺で治せるの?俺を心配させないように言ってくれてるだけじゃないの?」 「凛…、前にも言ったはずだ。俺はおまえさえいれば翼などいらないと。それに、おまえが癒してくれるというのも本当だ。まあ…何年かかるかはわからないけどな」 「でも…っ」 「お互いを思い合って、良い事だの。ふむ…承知したぞ、人の子。おまえの望みを叶えてやる」 「えっ!ほんとにっ⁉︎」 思わす叫んで神使を見つめる。 「私を何だと思っている?神の使いだぞ。出来ぬことなどない。ならば人の子、しばし外に出ていろ。呼ぶまでは入って来るな」 「は、はい…」 俺は、銀ちゃんの手をぎゅっと握って頷くと、言われた通り外に出た。 中の様子が気になって仕方なかったけど、うろうろとしながら待っていた。実際は、数分程度だったと思うけど、とても長く感じた。 しばらくしてギイと音を立てて扉が開き、銀ちゃんが出てくる。見た感じでは、何も変わった所はない。 「2人とも、また遊びに来るといい。私が姿を現わすかどうかはわからんがな」 神使の姿はどこにも見えなくて、どこからか声だけが響いてくる。俺は社に向かって「はいっ、ありがとうございました」と頭を下げた。 倉橋の神社から、俺達がいつも会っていた神社に来た。 神社の裏側に回って、俺は少しだけ銀ちゃんから距離をとる。銀ちゃんが目を閉じて大きく息を吐き、背中から翼を出した。 その姿に、思わず俺は感嘆の声をあげる。 バサリと広がった翼は、とても大きく、銀色の羽根がびっしりと生え揃い、陽の光を反射してきらきらと輝いていた。

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