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第179話 幸福

初めて見た時のように目を輝やかせて、俺は銀ちゃんの翼を見上げた。 「きれい…。太陽の光に反射してきらきらしてる…。やっぱり、銀ちゃんの翼が一番だよっ」 「ふっ、そうか?以前よりも大きくなってる気がするな。さすが、神の使いというところか…」 俺は嬉しくなって、銀ちゃんの腰に抱きつく。 「ねぇ、社の中で何をしてたの?」 顔を上げてずっと気になっていた事を尋ねた。すると、なぜか銀ちゃんが気まずそうに目を逸らせる。 「なんだよっ?教えてくんないの?…だったら、もう一緒に寝ない…」 俺がぷくりと頰を膨らませて睨むと、銀ちゃんは渋々といった様子で口を開いた。 「あいつ…俺に口付けやがった。まあ…性的なものではなく、口から何かを吹き込んでいたようだがな…」 「ええっ!な、なんだよっ、それっ!ぎ、銀ちゃんのばかぁ…っ!」 みるみる目に涙が溜まり、今にも溢れそうになる。 どんな理由があったとしても、神様の使いだとしても、銀ちゃんに触れるのは許せない。 たぶん真っ赤になってるであろう顔をして、俺は涙を流して怒った。 「ぎ、銀ちゃんが俺以外とキスするの、嫌だっ。ぐすっ…」 「おい、ちよっと待て。おまえが翼を治してくれと願ったんだぞ?だからあいつは、治す為に口付けたんだろ…。それに、俺だっておまえ以外となんてまっぴらごめんだ。ほら…そんな顔をしてないで、早くおまえが上書きをしてくれ」 銀ちゃんが、温かい腕と銀色の翼で俺を優しく包む。俺は涙で濡れる顔を上げて、銀ちゃんを見つめる。ゆっくりと顔が近付いて、数回唇を合わせた。そして、少し顔を離して見つめ合い、同時にふふっ、と笑った。

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