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第200話 甘い果実

新学期が始まって1ヶ月が過ぎ、新しいクラスにも慣れてきた。 ただ、担任の久世先生が、やたらと俺に構ってくるのが少し憂鬱だ。 清忠と一緒にいる時に廊下でばったり会うと、俺だけに挨拶をしたり話しかけてきたり。先生の授業の後に、教材を部屋に持って行ってくれと頼まれたり、放課後に資料作りを手伝わされたり。 一度、資料作りに清忠が付いて来た時には、「椹木一人でいい」と素っ気なく帰されていた。 気に入ってくれるのはいいのだけど、あからさまな態度は困る。まあ、寄ってくる女子達には優しいし、質問をしてくる男子にも丁寧に答えてはいる。 まるっきり俺だけを特別扱いしてる訳ではない。でも、俺と清忠が2人でいる時には、清忠に見向きもしないで俺に構ってくるんだ。 「あいつ、マジむかつくっ。しかもあれは絶対に凛ちゃんを狙ってるね!くっそ…一ノ瀬さんにチクってやるっ!」 ついさっきも、また先生に無下に扱われて、ついに清忠の堪忍袋の緒が切れたみたいだった。 「言ってもいいけど、あんまり大袈裟に言わないでよ。後で俺が大変な目に合うんだし、銀ちゃんの怒りが清にも来るかもしれないよ?」 ぷるぷると拳を震わせていた清忠が、ぴたりと動きを止めて俺を見る。 「そ、そうだな…。ほどほどに言おう…。いや、でもあいつの態度はやっぱムカつく!実際に一ノ瀬さんが目にしたら、この校舎がぶっ飛ぶぐらいに怒ると思うぜ」 「そうかなぁ。銀ちゃんはそんな理由で簡単に怒ったりしないと思うけど…」 興奮気味に話す清忠の言葉を俺が否定すると、清忠は、眉をひそめて下唇を突き出した変な顔をした。 「え〜っ、でも凛ちゃんに関する事だよ?あの人、凛ちゃんの事になると周りが見えなくなるじゃん。もうね、ほんとに一ノ瀬さんに出てきて欲しい。一言びしっと言って欲しい…」 「まあそうだよね。俺と清を同じ態度で接して欲しいとは思うよ。俺に用事ばっかり言いつけてさ、ちょっとうんざりしてるんだよね…」 「あ、それ心配してたんだけど、あいつと準備室にいる時、変な事されてない?もしくはされそうになってない?何かあったらすぐに叫べよ?俺は学校内なら、どこにいても凛ちゃんの声を聞き取るから」 「へぇ〜、そんな事も出来るんだ?清ってすごいね(すごいとこ、見た事ないけど…)。大丈夫、ほんとにこき使われてるだけだよ。でもいざという時には頼むよ」 俺がにこりと笑うと、清忠も親指を立てて自信たっぷりの笑顔を見せた。

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