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第204話 甘い果実

部屋の中のただならぬ雰囲気に、清忠は俺を背中に庇うと、久世先生を睨み付けた。 「なんか言い争う声がしたけど…。凛ちゃんに何かしたのかっ?」 先生が一歩、俺達に近寄る。 「別に?これは俺と凛の問題だ。部外者は出て行け」 「はあっ?てめぇ、凛ちゃんに手出ししたら、承知しねぇぞっ!」 「おまえは俺には敵わないよ。ひ弱な小狐なぞ相手にもならねーよ。ちっ、やっと見つけたのに、凛の周りうるさ過ぎ。もっとじっくり凛の心の中に入ろうと思ってたけど、もう面倒臭えわ。今すぐ、俺の棲家へ連れて行く」 「そんな事させねぇ!」 叫ぶなり清忠が先生に向かって手を伸ばし、大きな火の玉を飛ばす。先生が一瞬怯んだその隙に、清忠が俺の手を握って準備室から逃げ出した。 準備室からほど近い階段を駆け上がり、校舎の屋上へ出るドアの鍵を壊して屋上へ出る。 「凛ちゃんっ!一ノ瀬さんを呼んで迎えに来てもらおうっ。あいつが一体何なのかわかんないけど、飛んで追いかけては来れないだろっ」 「う、うん、わかった…っ」 俺は制服のポケットからスマホを出すと、震える指で操作をして、銀ちゃんを呼び出す。「お願いっ、出てっ」と祈りながら呼び出し音を聞く。3回鳴った所で、銀ちゃんが出た。 『凛?どうした?』 「銀ちゃん!助けてっ!すぐに学校の屋上に来てっ」 『…っ!わかった、すぐに行く。清忠は?』 「傍にいて俺を守ってくれてるっ」 『よしっ。待ってろよ』 すぐに通話が切れて、俺はスマホを握りしめたまま、清忠を見る。 「どうだったっ?」 「すぐに来てくれるって」 「わかった。あいつが来たら、俺が阻止するから凛ちゃんは俺の後ろにいろよ」 「うん、でも清も無理しないでよ」 「はっ、あいつ相手なら余裕だよ」 清忠の言葉に、スマホを握りしめた指先に力を込めて、俺は無理矢理笑顔を作って頷いた。 さっきから、どきどきと心臓がうるさい。先生が何者かはわからないけど、すごく怖い。妖ではないと思ってたけど、やっぱり人間でもないみたいだ。 たぶん、清忠では敵わないくらいに、強い気がする。清忠もそれをわかっているのか、青白い顔をして、校舎の中へ繋がる入り口を睨み付けている。 びゅうと風が吹き抜ける屋上で、銀ちゃんの到着を待つ。騒がしいはずの校庭の喧騒も消えて、静かな時間が流れていく。ほんの数分なのか、何十分も経っているのか、時間の感覚がよくわからなくなった頃に、コツコツと足音が響いて、入り口から久世先生が現れた。

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