225 / 287

第225話 満たされた後

目が覚めた時には、すでに外が暗くなっていた。部屋の中に銀ちゃんの姿がなく、俺は呻き声を上げながらよろよろと立ち上がり、震える足でゆっくりと部屋を出た。 居間に向かおうとしていたら、玄関扉が開く音がして、そちらに顔を向ける。 どこかへ行っていたのか、ちょうど銀ちゃんが入って来る所だった。 「凛、起きたのか。身体は辛くないか?」 「ん…、怠いよ…。銀ちゃん、どこ行ってたの?」 「ああ、悪い。心配させたか?ちょっとな、決着をつけてきた。ほら、中に入って話そう。足が震えてるぞ?」 くすりと笑って玄関を上がり、俺を抱き抱えて居間へと入る。 銀ちゃんが、俺を座卓の傍に座らせて、台所に行く。少しして、温かいココアを入れて戻って来た。ココアを俺の前に置くと、俺を膝の上に乗せて、後ろから抱きしめる。俺の耳朶にちゅっと口付けて、「凛…」と名前を呼んだ。 俺はココアが入ったカップを両手で持って、一口飲む。あったかいココアの優しい甘さがとても美味しい。 眠る前から俺のお腹の中がずっとぽかぽかしていて、とても幸せで穏やかな気持ちだ。 俺はひと息つくと、銀ちゃんに凭れて顔を上げた。 「…で、さっきはどこ行ってたの?決着って?」 「ん、おまえといつも会っていた神社に行ってた。そこで、くろと僧正、あの龍の野郎の兄の、蔵翔と会って来た」 「え?な、なんで?てか、先生はっ?追いかけて来てないっ?」 「大丈夫だ。倉橋にもらった札を玄関に貼ってあるし、俺も家の周りに強力な結界を張っておいた。だが、あいつは来てない。というか、来たくても来れなかったんだ」 銀ちゃんの言葉に、俺は「どういうこと?」と首を傾げて不可解な顔をした。

ともだちにシェアしよう!