229 / 287

第229話 お泊まり会

昨日、夜になって再び抱き潰された俺は、怠い腰をさすりながら泊まりの荷物を大きなリュックに詰めて、昼過ぎに銀ちゃんと家を出た。 清忠と駅で待ち合わせて、俺と銀ちゃんと清忠の3人で倉橋の神社に向かう。 浅葱にも声をかけて、夕方には神社に来る事になっていた。 神社の最寄りの駅で降りると、銀ちゃんが自然と俺の手を握る。内心、『人が見てる…』とドキリとしたけど、人の目よりも手を繋ぎたい欲求の方が大きかったから、俺も銀ちゃんの手を強く握り返した。 清忠はちらりと繋いだ手に目を向けたけど、もう見慣れた光景なのか、何も言わずに俺の隣を歩いていた。 神社の長い階段に着くと、隣に立つ清忠の身体の動きが固くなる。同じ側の手と足を同時に前に出す清忠を見て、俺は苦笑を漏らした。 俺が清忠の緊張を和らげるために声をかけようとした時、俺の手を握る銀ちゃんの手にも力がこもった。 ーーあ…銀ちゃんも白様は苦手だったっけ…。それなのに、俺の為に一緒に来てくれたんだ。でも、白様って偉そうで冷たい印象だけど、ほんとはすごく優しいと思うんだよね。なんで、銀ちゃんも清忠も苦手なんだろ…。 俺は二人を見て小さく息を吐くと、銀ちゃんの手を握り返し、清忠の背中を押して、長い階段を登り始めた。 最寄り駅に着いた時点で、倉橋に連絡を入れていたので、階段上の鳥居の下で待ってくれていた。 「ふふ、相変わらず椹木と一ノ瀬さんは仲ええな。真葛も元気になって良かったわ。ほな部屋に案内するから付いて来て」 爽やかな笑顔で俺達を迎えてくれた倉橋の後に付いて、神社から少し離れた場所にある家へと向かう。 前を歩く倉橋に、俺は周りをきょろきょろと見ながら尋ねた。 「ねぇ倉橋、白様はどうしたの?いつも鳥居の上から声をかけてくれてたのに…」 「ああ、なんか白もな、椹木達が来るのを楽しみにしてたみたいやねん。思わず浮かれてしもた自分が恥ずかしかったのか、落ち着く為に社にこもってるわ。そのうち出て来るやろうからほっといたらええで」 「そ、そうなんだ。ふふ…白様も人っぽいところがあるんだね」 「椹木達の前では偉い神様ぶってるけど、俺達とあまり変わらへんで。椹木も真葛も普通に話したらええねん」 「まあ…それはさすがに恐れ多いというか…。でもお礼も言いたいし、後で会いに行ってもいい?」 「ええよ。椹木は律儀やな」 話してるうちに家に着いた。倉橋が玄関の引き戸を開けて、「どうぞ」と俺達に中へ入るように促した。

ともだちにシェアしよう!