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第230話 お泊まり会

俺達は、縁側から庭が望める12畳の和室に通された。庭の向こうに目をやると、神社の本殿が見える。 庭を見ていた銀ちゃんが、突然小さく舌打ちをして言った。 「ちっ…、あいつ、あんな所から覗くなら俺達の前に姿を見せろよ」 「え?…ひぃ…っ!ほ、ほんとだ…。屋根の上からこっちを見てる…。あっ、目が合った…っ」 清忠が銀ちゃんの目線の先を見て、悲鳴をあげた。俺もつられて見たけれど、白様が姿を現さない限り、やっぱり俺にはその姿が見えない。 倉橋は当然見えるらしく、本殿を見て溜め息を吐いた。 「もうっ、気になるなら最初から会いに来たらええのに。しょうがないな…。ちょっと呼んで来るわ。寛いで待っといて」 そう言って、倉橋は部屋から出て行った。 「そ…そそ、そんなすぐに呼びに行かなくても……」 倉橋が出て行った障子に向かって、手を伸ばしながら清忠が呟く。 俺は鞄を部屋の隅に置くと、清忠の前に立って諭すように言った。 「清…、駄目だよ。今日はちゃんと白様の目を見て、しっかりお礼を言わないと。清の傷を綺麗に治してくれたんだから、白様は清の事を気に入ってると思うよ。だから、清も逃げないで、白様ともっと親交を深めなよ」 「えっ!そんな、おっ、恐ろしいっ。でも、そうだよな…。俺、白様に助けてもらわなかったら死んでたんだよな…。そこはきちんとお礼を言うよ」 「俺もお礼を言いたいから、一緒に言おう?」 「うんっ、凛ちゃん」 清忠が、俺の手を握って頷いた所で、銀ちゃんに手首を掴まれて悲鳴を上げた。 「いっ、痛い…!一ノ瀬さん、痛いですよ…」 「気安く凛の手を握るからだ。俺の許可なく触れるな」 「え〜…そんなぁ。凛ちゃん、一ノ瀬さんが、また理不尽な事を言ってるよ?」 「…ふぅ…。銀ちゃん、清は俺の命の恩人なんだから、もっと優しくてしてあげて。でないと、もう一緒にお風呂に入ってあげないよ」 「…わかった。清忠、少しぐらいなら凛に触れても許す」 「え、なにこの2人…」 清忠が、珍しい物を見たかのように目を見開いて、固まっている。ゆっくりと俺達から視線を逸らすと、「倉橋、早く戻って来てくれよ…」と呟いて、縁側から外を眺め出した。

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