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第232話 お泊まり会

あの後、倉橋のお母さんがお茶とお菓子を持って来てくれて、俺と清忠が手土産を渡して挨拶をした。 倉橋のお母さんは、とても上品でおっとりとした人だった。倉橋のお父さんは、今日明日と神社の総本社に出掛けていて、留守だという。「そんな時に押しかけて申し訳ない」と恐縮してると、「皆んなが来る事は言ってあるし、歓迎してたから大丈夫やで」と言ってくれて、安堵した。 ぼちぼちとバーベキューの準備を始めてる所へ、浅葱が大きな荷物を持ってやって来た。荷物の中には、上等な国産牛肉と数種類の飲み物、それにこれも上等な日本酒が入っていた。 荷物を縁側に並べてから、浅葱が倉橋に挨拶をする。 「こんにちは。お邪魔します。銀様の部下で、凛と清忠の友達の浅葱です。君の話は2人から聞いてるよ。よろしく」 「こんにちは。倉橋 蒼です。こちらこそよろしく。俺も2人から話は聞いてるで。仲良うしてな」 気が合いそうな2人を見て、自然と笑みが零れる。 俺の周りの皆んなが、人間とか妖とか種族とか関係なく、仲良くなってくれたら嬉しい。 俺があまりにもにこにことしていたからか、銀ちゃんに頰を摘まれた。 「銀ひゃん…いひゃいよ…」 「おまえ、外でそんな可愛い顔を晒すな。皆んながおまえを好きになったらどうするんだ」 「……前からわかってたけど、銀ちゃんて、つくづく俺バカだよね…」 「この世に、おまえ以外に興味のあるものなどない」 ずばりと言い切る銀ちゃんに、俺は呆気にとられてしまう。でも、いつもはっきりと俺だけだと言ってくれるから、俺は安心して銀ちゃんの傍にいられる。 ここがどこだかを忘れて、銀ちゃんに顔を近付けようとした瞬間、庭から声がかかった。 「凛、そろそろ始めるよ。あ、銀様、そういうのは夜まで待って下さいね。ほら、後ろで神使の狐様が待ってますから、お二人で飲み交わしていて下さい」 銀ちゃんが小さく溜め息を吐くと、素早く俺の唇にキスをした。そして、「続きは後でな」と囁いて、白様の元へ行く。 俺は誰かに見られてなかったかな…と庭に目をやると、清忠が不自然に目を逸らした。 途端に熱くなった頰を誤魔化すように袖で擦り、急いで庭に下りて、俺の好きなカボチャとトウモロコシを網の上に並べ始めた。

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