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第234話 お泊まり会
銀ちゃんに手を引かれて部屋に戻ると、すでに布団が敷いてあった。
倉橋と清忠、浅葱の3人は、テレビの前に並んで座り、真剣に画面を見ている。
俺は3人に近付いて、後ろから「何見てるの?」と声をかけた。その瞬間、清忠が悲鳴を上げて飛び上がった。
「うぎゃあっ!」
「わっ!びっくりした…!え?なに?」
「清忠、ビビりすぎ…。仮にも妖だろ?」
清忠の悲鳴に驚いて、俺も大きな声を出してしまった。そんな清忠を見て、浅葱が苦笑いをしながら溜め息を吐く。
胸を押さえて、はあはあと呼吸を整えている清忠の背中を撫でて、倉橋が答えてくれた。
「今な、『本当に怖い呪いのビデオ』っていう、レンタルDVDを見ててん。真葛や浅葱は妖やし、心霊ビデオは平気なんかなぁ…て思てたら、意外に真葛が怖がりでな。ずっとびくびくしながら見てたんや。そこに、椹木達が戻って来ていきなり声をかけられたから、テンパってしもたんやな。しかし大きい声やったな。こっちまでビビってしもたわ…」
「えぇ…、なんでそんな怖いのがあるんだよ。俺だって見たくない…」
テレビ画面が目に入らないように顔を逸らすと、清忠が俺の手を強く握ってきた。
「そ、そうだよなっ?怖いよなっ?妖だって怖いもんは怖いんだよ…っ。もう見るの止めよ?俺…トイレに行けなくなる…」
清忠の言葉に同意して、俺もコクコクと頷いてみせる。すると、清忠がまた大きな声を上げて飛び跳ねた。俺はまたもや驚いて清忠を見ると、今度は銀ちゃんが清忠の手首を強く掴んでいた。
「痛っ!い、痛いっす!一ノ瀬さんっ。凛ちゃんの手を握って、すいませんでしたっ」
清忠が謝って、ようやく銀ちゃんが手を離す。清忠は手首をさすりながら涙目になって、「なんか疲れたしもう寝る…」と言って、一番奥に敷いてある布団に潜り込んでしまった。
「あいつは…。すぐに凛に触ろうとする」
銀ちゃんが呟いて小さく息を吐く。ふと、何かに気付いたように倉橋を見て言った。
「神使はどうした?」
「白は社に戻りました。また明日の朝早くには、ここに来ると思います」
「そうか。じゃあ凛、そろそろ俺達も寝るか」
俺の肩を抱いて、銀ちゃんが布団に連れて行く。
「あ、銀様。一緒の布団に寝てもいいですけど、場所を考えて下さいよ?」
「おまえに言われなくてもわかってる。まあ、我慢出来たらの話だがな」
「え?俺、別々の布団で寝るよ?」
当然のように、一緒の布団で寝ようとする銀ちゃんに、俺はきっぱりと断った。
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