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第241話 天狗の花嫁

「俺はおまえと出会ってからは、すべてがおまえ優先になったからな」 さらりとそんな事を言ってのける銀ちゃんに、俺は照れてしまう。 「そういえば毎週遊んでたもんね。春休みとかは、毎日会ってたよね?」 「あの頃は毎日が楽しかった。おまえに会うと、どんな嫌な事でも頑張れたんだ。もちろん、おまえと共にある今の方が、この上なく幸せだ」 「銀ちゃん…。俺、銀ちゃんと出会えてほんとに良かった」 「コホンっ。もうそれくらいでいいか?」 うっかりと二人の世界に入りそうになって、鉄さんの声に慌てて背筋を伸ばした。 「ねぇ鉄さん、奥さんになる僧正さんの妹さんは?今日は会わないの?」 「今日は家族で過ごす最後の日だからね。実家でゆっくりとしてるんじゃないか?」 「そっかぁ…。早く会って見たいな。天狗族って皆んな綺麗じゃん。その彼女も綺麗なんだろうなぁ」 「ああ…。そういえば、大きな目がどことなく凛に似てるな。彼女は杏(あんず)と言うんだ。仲良くしてやってくれ」 「杏さんっ!可愛い名前だね。僧正さんと違ってきっと可愛らしいんだね。ふふ、会えるの楽しみ」 「確かに僧正とは似ても似つかんな。でもまあ、凛の方が名前も顔も可愛いがな」 「銀ちゃんっ。またそんな事を言う。そんな風に思ってるの銀ちゃんだけなんだからね。俺のいない所で言っちゃダメだよっ」 「…わかってる。俺以外にもそう思ってる奴はいると思うがな…」 ちらりと鉄さんを見て、銀ちゃんが不服そうに言う。俺だけに言うならいいけど、その彼女が聞いたらとても失礼な発言だ。 俺は釘をさすように、下から眉を寄せて銀ちゃんを見上げた。銀ちゃんは、苦笑いをして俺の眉間を指で押す。 「おまえは表情がくるくると変わって、見ていて飽きないな。大丈夫だ。俺の社交術は完璧だ」 ーー社交術…。術なの?銀ちゃんは誰とでもソツなく接するけど、俺に関係する事では、ちょっとおかしくなるから心配なんだよ…。 そう思ったけど、俺の事が好き過ぎるのが原因だからしょうがないか、と眉間のシワを伸ばして笑った。

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