247 / 287

第247話 天狗の花嫁

「この契約は、痛みを伴うし恐ろしいぞ。契約成立の為に、お互いの血肉を喰らうのだ。前は俺の血をおまえの体内に入れるだけで良かったが、今度のは、お互いに血と肉を喰らわなければならない。凛…、俺の肉を飲み込めるか?身を喰われる痛みに耐えられるか?」 「血と肉…」 銀ちゃんの話を聞いて、俺の指先が冷たくなり、心臓が早鐘を打ち始める。 ーーえ…?俺…銀ちゃんを食べるの?それに…食べられるの?俺は……、うん、大丈夫。愛しい人だから、何をされても我慢出来る…! 俺は一つ頷くと、まっすぐに銀ちゃんを見た。 「銀ちゃん、俺、大丈夫だよ。銀ちゃんともっと深く繋がれるなら、出来る。でも…そんなにいっぱいは食べれない…」 「ふっ、やっぱりおまえは強いな。肉を喰らうといっても、ほんの少しだけだ。小豆ほどの大きさでいい。とはいえ、身を裂かれるには違いない。かなりの痛みがあるぞ。本当に大丈夫か?」 「俺さ、崖から落ちて怪我した時も、僧正さんに刺された時も、声を上げなかったんだよ?だから、愛しい銀ちゃんになら、何されても平気だよ」 「…ああ…本当に、おまえには敵わないな…。おまえは強くて美しい。俺の、宝だ」 そう言うと、銀ちゃんは身体を起こして服を脱いだ。俺にも起きるように言って、すべて脱がされ裸になる。 何もまとわない俺を抱き寄せて、しっとりと唇を合わせた。舌を絡めながら背中に回された銀ちゃんの腕が、離さないとばかりに俺をきつく縛る。 とろりと蕩けた俺は、荒い息を吐いて滲む瞳で銀ちゃんを見つめた。 銀ちゃんが、俺の頭を支えてそっと寝かせる。 「凛、おまえに俺の肉を噛み切るなど出来ないだろ?おまえの口に入れてやるから、頑張って飲み込んでくれ。俺は、なるべく目立たないように、おまえのここに口をつける…。いいか?」 銀ちゃんが俺の内腿をするりと撫でる。俺は、銀ちゃんの目を見たまま、強く頷いた。 心なしか、俺よりも銀ちゃんの方が緊張してるように思える。俺に、非人道的な事をさせるのを、ためらっているのかもしれない。 銀ちゃんは、とても強くて、俺以外には顔色一つ変えずに非情な仕打ちをするくせに…。俺に関しては、いつも心配して怯えるんだ。 俺はふわりと笑って、銀ちゃんの頰に手を添えた。 「銀ちゃん、俺は平気だから。早く、一心同体になろう?気を使わなくていいよ。思いっきりやって」 「凛…」 銀ちゃんは、ほうーっと長く息を吐くと、やっと顔が綻んで、俺の額から順に、下へと口付けていった。

ともだちにシェアしよう!