257 / 287

第257話 番外編 椹木 蓮の花嫁

◇本編では全く出てこなかった凛の兄、蓮がここに来てやっと登場します。初めは凛視点、途中から蓮視点になります◇ 滞りなく終わった鉄さんの式から3週間が経ち、夏休みに入った。 今年の夏休みはどういう気まぐれなのか、俺の兄ちゃんが、東京からこの家に遊びに来ると言う。 てっきり今年の夏休みも、バイトで忙しいのかと思っていたから驚いた。でも、年末以来会ってなかったから、久しぶりに会えるのが、少し楽しみだ。銀ちゃんをちゃんと紹介したいし…。 でも何やら、兄ちゃんの方が、俺に会わせたい人がいるらしい。 【父さん母さんにはすぐに会いに行けないし、先におまえに紹介しておこうと思って。俺が帰る日に連れて行くからよろしくな】 突然そういうメールが送られてきて、思わず「ええっ⁉︎」と大きな声を上げてしまい、銀ちゃんを驚かせた。 「どうしたんだ?」と聞いてくる銀ちゃんに、兄ちゃんからのメールを見せる。 銀ちゃんは優しく微笑んで、「凛の兄か…、会えるのが楽しみだな」と、俺の頰を撫でて言った。 銀ちゃんの嬉しそうな顔を見てると、『どんな人を連れて来るんだろう』と少し不安になってた俺の気持ちが、だんだんとワクワクとしたものに代わってきた。 兄ちゃんが帰ってくる日、前日に掃除を終わらせていた俺は、朝からそわそわと落ち着かなかった。何度も居間を出たり入ったりして、最後には銀ちゃんに捕まり、膝の上に乗せられてしまった。 「凛、落ち着け。どうしたんだ?」 「だって、兄ちゃんが連れて来る人って、きっと恋人だと思う…。友達って言わなかったし。なんかそれって…緊張するじゃんっ!」 後ろの銀ちゃんを見上げて興奮気味に話すと、銀ちゃんが目を細めて俺の唇に口付けた。 「くく…、おまえは本当に見ていて飽きない。おまえは、俺を紹介することは緊張しないのか?」 「え、なんで?銀ちゃんの事は早く紹介したいっ。だって、俺の自慢の旦那様だもんっ!」 「そうか…。じゃあしっかり挨拶しないとな」 「あっ、あんまりかっこよくしなくていいよ。皆んなが銀ちゃんを好きになったら困るし…」 「凛、俺はおまえが心配するほどモテないぞ?」 「…そんなのうそだ」 「俺は、おまえの方こそ誰にも好かれるから心配だがな」 滅多に見ない銀ちゃんの拗ねた表情に、俺の胸がきゅんとなって、お腹に回された銀ちゃんの手に手を重ねた。 「銀ちゃん…、俺は銀ちゃんだけだよ?」 「知ってる。俺もおまえだけだ」 「うん、よく知ってる」 お互い顔を見合わせて、くすりと笑ったその時、玄関から兄ちゃんの声が聞こえてきた。

ともだちにシェアしよう!