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第258話 番外編 椹木 蓮の花嫁
俺は銀ちゃんの膝の上から飛び上がり、一度銀ちゃんを見てから小走りで玄関へ向かった。
玄関には半年以上振りに会う兄ちゃんと、青地に小花が散りばめられたワンピース姿の、綺麗な女の人が……。
「あ、あれ?茜…さん?」
「えっ?うそっ…、凛⁉︎」
「え?なに?2人は知合い?」
兄ちゃんの隣に茜さんが立っていて、俺は大声を出して驚いた。茜さんも、手を口元に当てて、とても驚いている。でも、一番驚いてるのは、兄ちゃんだった。俺と茜さんの顔を、忙しなく交互に見て目を丸くしている。その上、居間から銀ちゃんが出て来て、益々忙しく首を巡らせていた。
「どうぞ…」
あの後、銀ちゃんが皆んなに上がるように言って、今は居間の座卓を囲んで座っている。
俺は、座卓の上に冷たいほうじ茶を並べて、銀ちゃんの隣に座った。
「ありがとう、凛。お気遣いなく。あの、銀様、兄様の式の時には、翠が失礼をしました」
「ああ…あれか。茜が気にする必要はない。翠にはきつく言っておいたからな、さすがに諦めたと思うぞ」
「ええ、3日前に会いましたけど、今度こそ諦めたと言ってました。凛ももう大丈夫よ。銀様にスッパリと断られて、あなたとやり合う気力もないみたいだから」
「あ、はい。俺は大丈夫です」
実は、式の後に鉄さんの家で披露宴が行われている時に、赤の振り袖を着た翠さんが、銀ちゃんの腕を引っ張ってどこかへ連れて行くのを見た。でも5分くらいですぐに銀ちゃんだけが戻って来た。少し怖い顔をしていたけど、俺と目が合うとにこりと笑って、「俺の気持ちが変わる事は永遠にないと、はっきり伝えた」と教えてくれた。
新たな契約の後から、俺には揺るぎない自信かあったから、もう誰が銀ちゃんに近づこうとも気にしない。
俺は隣に座る銀ちゃんに、「俺も永遠に変わらないよ」と囁いた。
だから、翠さんの事はもう解決済みで心配しなくていい。
それより今は…。
俺の窺うような視線を受けて、兄ちゃんが話し出した。
「えっと、こちら、一ノ瀬 茜さん。俺の恋人…というか、コホンッ、け、結婚の約束をしてる…。で、でも凛と茜は、知り合いだったんだな」
「へぇ〜恋人…。えっ!恋人っ⁉︎結婚っ⁉︎」
「えへ、そうなの。私、蓮が大好きなの。でも、蓮の弟が凛だなんて…、とても驚いたわ」
顔を見合わせて照れ笑いを浮かべる2人を、俺は固まったまま見つめた。
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