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第261話 番外編 椹木 蓮の花嫁
俺の緊張を感じ取ったらしい茜が、俺の手を柔らかい手でそっと包んだ。
「蓮、大丈夫よ。前にも言ったけど、兄様が次期当主と決まってから、父様の機嫌がすごくいいの。それに最近は、凛のおかげで人間に対しても好意的になってるわ。きっと私が選んだあなたの事は認めてくれる」
「茜…」
愛しい思いで茜を見つめてると、凛が咳払いをしながら苦い顔で俺を見た。
「エヘンッ、んっ…、なんか身内がイチャイチャしてんの恥ずかしいな…。兄ちゃん、頑張ってね。俺、応援してるよ。それに、父さん母さんは茜さんの事、喜ぶと思う。俺が同じ男の銀ちゃんと付き合うのを認めてくれたんだもん。特に母さんは、女の子を欲しがってたじゃん?茜さんと会ったら、飛び跳ねて喜ぶよ」
「凛…」
俺を応援してくれる凛を見て、昔、イジメたりして悪かったな…と少し反省する。それと、俺の前で、散々銀さんとイチャイチャしてるおまえが恥ずかしいとか言うな。
口に出すと銀さんに睨まれるのがわかってるから、心の中で呟いた。
昔、俺が使っていた部屋に、凛が掃除をして布団を敷いておいてくれた。
俺と茜は、明日の事もあるからと早々に部屋へ引き上げた。
茜と手を繋いで布団に横になり、月明かりが差し込む天井をぼんやりと眺めて、夕食時に銀さんが話した内容を反芻する。
銀さんの隣にいる凛は、とても幸せな顔をしていて、見ている俺まで温かい気持ちになる。
だけど、銀さんから聞いた話によると、凛はかなり危ない目に合ってきたみたいだった。命を落としかけた事もあったという。銀さんは、全部自分のせいだと謝ってたけど、そういう事も乗り越えてきたからこそ、2人は強い絆で結び付いているのだろう。
俺も、茜の為ならどんな危険な目に合おうとも厭わない気持ちがある。それに、茜の素性を凛が知っているという事は、茜にとってすごく安心出来る事だと思う。
きっと俺の可愛い弟は、俺達の為なら精一杯力になってくれるのだ。だから俺も、この先2人が困難にぶつかった時には、力の限り助けてあげたいと思う。
そう心の中で決意した矢先に、ふいに部屋の外からかすかに2人の笑い声が聞こえてきた。
ほんわかと温かい気持ちになった俺は、茜を胸に抱き寄せると、そっとキスをして目を閉じた。
…end.
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