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第263話 番外編 真葛 清忠の幸せへの道
◇いつも銀から不憫な扱いを受ける清忠の恋愛話◇
2学期が始まって1週間が過ぎた頃、学校からの下校時に凛ちゃんと門を出ようとしたら、女の子に声をかけられた。
「あ、あのっ、真葛くん…っ、ちょっといいかな?」
「え?俺?」
振り向くと、小柄で肩までの髪の大きな目をした可愛らしい子が、俺をじっと見ていた。よく見ると、胸の前で組まれた手が小さく震えている。
隣の凛ちゃんに目を向けると、にこりと笑って、「あ〜、俺駅前のコーヒーショップで待ってるよ」と言って、手を振りながら門を出て行った。
俺は、凛ちゃんに「悪い」と謝って、彼女に向き直る。
「え〜っと、何かな?」
「あ、ごめんっ。ここじゃあれなんで、ちょっと来てもらってもいい…?」
「うん、わかった」
ふわりと笑う彼女に少しどきどきしながら、彼女の後を付いて行った。
校庭の端の人が通らない場所まで来て、彼女が立ち止まり、俺の正面に立って、少し俯き加減に俺を見た。
「あのっ、私、隣のクラスの加瀬 茉由(かせ まゆ)って言います。私、真葛くんのことが好きです!よかったら…付き合ってくれませんかっ?」
「ええっ⁉︎」
一息に話し終えた彼女…加勢さんは、真っ赤な顔をして、俺を見つめていた。
ーーてか、え?俺を好きって言った?ウソ…マジでっ⁉︎こんな可愛い子が俺を…っ!
俺が感動を噛みしめていると、正面から「あの…」と窺うように加勢さんが声を出した。
「あっ、ごめんっ。なんか好きって言われたのが嬉しくて…。てか、俺でいいの?」
「真葛くんがいいんですっ。あの…ダメ、かな?彼女がいるの…?」
潤んだ瞳を向けられて、俺は力強く首を横に振った。
「いないいないっ!んっ、コホンっ…。あの、俺でよければお付き合いしましょう。ただ、俺はまだ加勢さんの事をよく知らないので、好きかと聞かれれば何とも言えないけど…」
「そんなのっ、わかってます。これから会う回数を重ねて、少しでも好きになってもらえればいいな…って思う…。じ、じゃあ、よろしくお願します…っ。はぁ〜、どうしよう…。すごく嬉しいっ」
両手を頰に当てて嬉しそうに笑う彼女を見て、素直に可愛いいなぁ、と思った。
加勢さんと携帯番号とメールアドレスの交換をして、門で別れて、凛ちゃんが待つコーヒーショップへ向かう。この事を凛ちゃんに早く伝えたくて、俺は自然と走り出していた。
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