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第264話 番外編 真葛 清忠の幸せへの道

「で?一体何の話だったの?」 早く凛ちゃんに話したくて、コーヒーショップに駆け込んで来たものの、先ほどの出来事を頭の中で反芻してにやけるだけで、一向に話さない俺に痺れを切らした凛ちゃんが、少しイラついた顔で俺を見た。 その顔があまりにも怖くて、俺は内心『一ノ瀬さんに似てきたんじゃね?』と思ったが、そんな事を口走ったりしたら、すぐに一ノ瀬さんの耳に入って、俺は恐ろしい罰を受ける事になってしまう。だから俺は、「あ、コホンっ…。ご、ごめん。あのさ…」と、一つ咳払いをしてから話し出した。 俺の話を聞いていくうちに、凛ちゃんがだんだんと笑顔になって、話し終えた頃には自分の事のように喜んでいた。 「清、良かったじゃん!可愛い彼女が欲しいって言ってたもんね。あの子、中々可愛かったよ?性格も優しそうだったし。へぇ〜…、清に彼女かぁ。告白するってすごく勇気のいる事だよね?それをしてくれたって事は、その子、本当に清が好きなんだよ。まあ、清の気持ちが一番大事だけど、真剣に考えてあげなよ?」 「もちろんそのつもりだよ。彼女…加勢さんって言うんだけど、一生懸命に気持ちを伝えてくれたしな。とりあえず、今度の休みにデートに誘おうかな、って思うんだけど、どこがいいと思う?」 凛ちゃんが、生クリームがたっぷり乗ったコーヒーフラペチーノを飲みながら、目を上に向けて考える。 「俺はさ、銀ちゃんと一緒ならどこでも楽しいと思っちゃう。だから、きっと彼女も、好きな清と一緒なら、どこでも喜んでくれると思う。行く前に彼女に連絡して、清が考えた候補の中から選んでもらったら?」 「そうだな…。いくつか考えて聞いてみるよ。いや〜、恋愛の大先輩がいると心強いっす。これからも、色々と相談してもいい?」 「ふふ、いいよ。何でも聞いて。って言っても、俺の場合は特殊だから…」 「凛ちゃん!」 思わず大きな声を出してしまい、そっと周りを窺ってから凛ちゃんに顔を寄せる。 「凛ちゃん、恋愛に特殊もクソもないよっ。俺は正直、一ノ瀬さんと凛ちゃんがすごく羨ましいと思ってる。だって、お互いをすごく想い合ってすごく強い絆で結ばれてて…。すっげー憧れる!だからそんな事、二度と口にしちゃダメだよっ?」 「…わかった。ありがと…清」 ふわりと笑う凛ちゃんを見て、胸が詰まりそうになる。 あんなに一ノ瀬さんに愛されて、一ノ瀬さんの隣ではいつも幸せな表情の凛ちゃんだけど、俺の前では時々、ネガティヴな事を口にする。 一ノ瀬さんを愛していて、花嫁の契約まで交わしているのだから、一生添い遂げるつもりなのだろうけど、心のどこかでは、一ノ瀬さんに対して申し訳ないという気持ちがあるのかもしれない。 一ノ瀬さんは、天狗族の次期当主だっだ。だけど、当主にはなれなくなった。まあ本人が、ならないと決めたそうだけど…。凛ちゃんは口には出さないけど、それが、自分のせいだと思っている。凛ちゃんは、真面目で責任感が強いから、どんなに一ノ瀬さんが「凛のせいじゃない」と言っても納得しないのだろう。 俺は聞いただけで、実際目にした訳じゃないからよくわからないけど、凛ちゃんは、一ノ瀬さんの為に何度も危険に身を晒している。それを一度だって一ノ瀬さんのせいにした事はない。それだけじゃなく、自分を襲った相手まで、結局は許してしまってるんだ。 自分の事は置いておいて、いつも他人の為に精一杯頑張る凛ちゃんを、俺は尊敬する。だから、もっと自分に自信を持って欲しい。例え、周りから何か言われたとしても、凛として跳ね除けて欲しい。 俺が凛ちゃんを見つめたまま、じーっと考え込んでいたから、ねだってる様に見えたのか、凛ちゃんが俺の前に、「はい、飲みたかったんだね」と、甘そうなコーヒーフラペチーノを差し出した。

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