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第265話 番外編 真葛 清忠の幸せへの道
凛ちゃんと別れて家に帰ると、早速加瀬さんにメールを入れた。凛ちゃんが言ってた通り、『どこでも嬉しいっ』と返信が来たけど、『強いて言うなら、観たい映画があるから映画でもいい?』と提案してきたので、OKマークを作るパンダの絵を送った。すぐに加瀬さんから、ウサギがお辞儀している絵が送られて来た。
なんか、こういうやり取りが彼氏彼女って感じで、照れてしまう。
俺は、デートの日はまだ先だというのに、洋室にあるクローゼットを開けて、着て行く服を選び出した。
俺と加瀬さんは、週末の度に水族館や遊園地、スイーツ巡り(これは凛ちゃんに羨ましがられた)に出掛けた。
加瀬さんは、気が効くしよく喋るし、一緒にいてとても楽しい。
加瀬さんに告白されてから1ヶ月が過ぎた日、彼女の買い物に付き合った帰り道に、俺の方から「加瀬さんが好きになったので、付き合って下さい」と、お願いした。
加瀬さんは、顔を真っ赤にして、目を潤ませて、とても喜んでいた。
俺と加瀬さんは、駅から加瀬さんの家までの道のりを、手を繋いで歩いた。俺はもう少し一緒にいたくて、「少し寄り道しよう」と横道に逸れて、大きな公園に入った。
公園には、もう夕方だからか人気がなく、時おり鳥の鳴き声だけが聞こえてくるだけだ。俺は、加瀬さんの手を引いてベンチの方へ向かった。その時、公衆トイレの陰から、制服を着崩した茶髪の4人の男がゾロゾロと出て来た。
俺は咄嗟に加瀬さんを背中に隠し、4人の男と対峙する。男達はいやらしい笑みを浮かべて、俺の後ろにいる加瀬さんを覗き込もうとした。
「なぁおまえ、可愛い彼女を連れてるじゃねぇか?ちょっと貸してくんねぇ?」
「俺たち、寂しいんだよね。すぐに済むからさ、いいだろ?」
4人の中の1人が、くちゃくちゃとガムを噛みながら、加瀬さんに向かって手を伸ばした。俺はそいつの腕を掴み、ギロリと睨み付ける。
「あっ?何すんだよっ?俺たちとやんのか?」
「穏便に済ませてやろうとしてんのに、おまえバカか?」
「うるせぇ!汚い手で彼女に触れるな」
俺の後ろで、加瀬さんの身体が小刻みに震えているのが伝わってくる。俺は何としても加瀬さんを守らないといけない。そもそもは、遠回りしようと言った俺のせいなのだから。
「おまえ…ウザい」
「ぐっ…!」
俺に腕を掴まれていた男に、いきなり腹をヒザ蹴りされた。前屈みになったところを、横から思いっきり殴られる。俺が2人の男にボコボコに殴られているうちに、残りの2人が加瀬さんの腕を掴んで、公衆トイレへと引っ張って行くのが見えた。
「いやっ!真葛くんっ、助けて…っ!」
加瀬さんの悲鳴を聞いた瞬間、俺の理性がプツンと切れる音がした。
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