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第266話 番外編 真葛 清忠の幸せへの道
俺は自分でも何が起こっているのかわからなかった。ただ、俺の頭と身体が沸騰してるかのように熱い。
ーーあれ?以前にもこんなに熱くなったことがあった…。あれは…。あ、そうか、凛ちゃんが久世に連れ去られそうになった時…。
ぼんやりと思い出していると、「ま、真葛…くん…?」と、怯えた加瀬さんの声が聞こえた。
その瞬間、はっと意識が戻り、頭と身体の熱がすーっと引いていく。フゥッと大きく息を吐いて周りを見ると、あの4人の男達が、鼻や口から血を流して倒れていた。
「え…?」
俺は戸惑って4人を順番に見る。ふと、俺の手がじんじんと痺れてるのに気付いて見ると、手の甲が血で汚れていた。
ーーああ…。これ、俺がやったんだ。加瀬さんの悲鳴を聞いて、助けなきゃ…って。
振り向くと、腰が抜けたのか、加瀬さんは座り込んでいたけど、どこも怪我はないようだった。それにホッとして、俺は「大丈夫?」と言いながら、加瀬さんに手を差し出す。だけど、なぜか加瀬さんは、目を見開いて後ずさり、何とか立ち上がると、逃げるように公園から出て行ってしまった。
俺はポカンと口を開けて、加瀬さんの後ろ姿を眺めた。『なんで逃げたんだろう』と考えて、『目の前で人を殴るところを見て、パニックになってるのかな』と、呑気に思っていた。
俺は、倒れている4人の怪我の具合を調べようと、振り返った。その時、西陽を浴びて地面に伸びた影を見て、加瀬さんが逃げた本当の理由を知る。
地面に伸びた俺の影には、人間にはない大きな耳と尻尾が生えていた。
俺は、大きな尻尾を揺らめかせて、乾いた笑い声を上げた。
「…は、はは…、そっか、そうだよな…。俺は、人間の姿の時は弱いんだった。こいつらが倒れてるって事は、俺が妖狐の力を使ったからだ。妖狐の力を使うと、どうしても耳と尻尾が出てしまう。あ〜あ…、彼女には、まだ知られたくなかったなぁ…」
影を見つめて呟く俺の足元に、ぽたぽたと雫が次から次へと落ちていく。しばらく泣いて、鼻をすすって袖で顔を拭うと、倒れてる4人の怪我を見て、4人から俺と会った記憶を消した。
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