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第271話 番外編 浅葱の願い

凛の怒った顔を見て、銀様が優しく凛の頰を摘んだ。 「凛…、そんな顔をするな。悪かった。清忠は、いい子に巡り会えたんだよな」 「そうだよ。ホントに可愛くていい子なんだから。清忠と加瀬さんには、ずーっと仲良くいてもらいたい」 「俺達のようにか?」 「うんっ」 銀様に顔を覗き込まれて、凛は弾けるような笑顔を見せた。 「いい子なのはわかったけど…。なんか先越された感が嫌だ〜…」 どうしても素直には喜べず、ぶつぶつと呟く俺に凛が言った。 「浅葱はかっこいいんだし、郷でモテないの?」 「モテないこともないけど…。でも、天狗の郷にはイケメンばっかいるんだよ?俺なんて…」 「浅葱、おまえ、くろの側近の一人になったんだろ?位が上がったから、寄ってくる奴がいるんじゃないのか?」 「はい…まあ、そうなんですけどね…」 「え?浅葱、すごいじゃんっ」 凛が自分の事のように喜んでくれる。 確かに位が上がって、声をかけてくる女の人も何人かはいる。だけど、誰が来たとしても心が動かないんだ。 だって俺は、銀様と凛を知ってるから。 2人の深い愛を、強い絆を知ってるから。 それを羨ましいと、思ってしまってるから。 だから、軽く誰かと付き合う事なんて出来ないのだ。 俺は大きな溜め息を吐いて、凛を見た。 「なに?」 「いや…、凛さ、銀様と出会ってくれて、ありがとう」 「え?え?どうしたの?」 「うん、なんとなく…。まあ気にしないで?」 そう言うと思いっきり笑って、俺は残りのおはぎを口に放り込んだ。 しばらく郷の事を話して、2人の家を後にした。 山の入り口の神社へと歩きながら思う。 俺は、清忠に先を越されて悔しいとは思うけど、彼女はまだいらない。 だって、俺の今一番の望みはーー。 願わくは、たくさんの困難を乗り越えて、ようやく穏やかに過ごせている銀様と凛の幸せが、この先永遠に続きますように。 夕焼けに赤く染まる空を見上げて、しみじみと思った。 神社に着いて、翼を広げてふと動きを止める。 やっぱり、清忠の彼女の件は悔しい。悔しいけど、清忠が幸せな事も、ちょっと嬉しい。だから、少しからかってやろうと思い立ち、翼を仕舞うと、身を翻して清忠の家に向かって駆け出した。 …end. 【おまけ】 「清忠、彼女が出来たんだってな」 「え?あ、凛ちゃんから聞いた?聞いちゃった?そうなんだよねぇ。俺、今、世界がピンク色に見えてんの」 「…チッ…」 「ん?何か言った?あ、そうだ。写真見る?」 「…ウソだ。可愛いじゃんか…。こんな可愛い子が清忠を?なんで?」 「…浅葱、ちょこちょこ俺をディスってる?」 「そっ、そんなワケないじゃんっ。いやぁ、よかったな、清忠。羨ましいよ」 「だろ?ありがと、浅葱」 「…やっぱり悔しい…っ。蒼の神使に言いつけてやるっ」 「なんでっ⁉︎」 この後、倉橋神社まで飛んで行き、蒼に慰めてもらいました。

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