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第277話 番外編 かすみ草

◇話が飛びます。凛の卒業式◇ 銀ちゃんと再会してから3年が経った。 今日は高校の卒業式。新しい門出を祝うかのように青く晴れ渡った空の下、玄関で見送る銀ちゃんに大きく手を振って、俺は走って駅に向かった。 清忠と電車に揺られながら、いろんな事があったなぁ…と懐かしく思い返す。 銀ちゃんと再会してからの1年は、俺の人生の中で断トツに激しい1年だった。 次の1年は、初めに辛い事もあったけど、嬉しい事の方が多かった。清忠に彼女が出来たし、鉄さんが結婚して、鉄さんの奥さん、杏さんのお腹に二人の赤ちゃんが出来た。 去年は、何事もなく平穏に過ごせたけど、俺が受験で頭がパンクしそうになった。でも銀ちゃんが、勉強や気持ちの面で支えてくれたから、頑張って乗り越えられた。 おかげで、銀ちゃんが通った大学ほどではないけど、俺の希望する大学に進学出来た。清忠も学部は違うけど、同じ大学で、また一緒に過ごせるようになって嬉しい。 倉橋とは違う大学になったけど、定期的に倉橋の神社に、俺と清忠と浅葱で遊びに行ってる。この4人の友達関係は、ずっと続けたいと思っている。 卒業式を行う為に、体育館に入場する。入場するなり、とても目立つ集団が、ちらりと目の端に映った。俺は少し苦笑しながら、隣に座る清忠に小さく囁く。 「あそこ…すごく目立つよね?清忠の兄さん、なんで銀ちゃんの横にいんの?」 「わかんね…。そもそも、俺は来なくていいと言ったんだけどな。てか、一ノ瀬さんを挟んで兄さんの反対側に座ってんのって…」 「うん、俺の兄ちゃん。その隣が兄ちゃんの恋人の茜さん。茜さんは銀ちゃんの従姉妹なんだよ」 「へぇ〜、凛ちゃんの兄さんって、あんま凛ちゃんに似てないんだな。でもかっこいい」 「ちょっと待って。俺に似てなくてかっこいいって何?それって俺はかっこよくないってこと…」 「違うって。凛ちゃんはかっこいいじゃなくて可愛いだろ?一ノ瀬さんにも、いつも可愛いって言われてるだろ?」 「…銀ちゃんに可愛いって言われるの嬉しいけど…。銀ちゃん以外にはかっこいいって思われたい…」 「凛ちゃん…意外とわがまま…」 「え?何か言った?ねぇ、それより銀ちゃんの後ろに座ってる人って…もしかして…」 「お…俺も気づいた…っ。あれって、は、白様…だよな…。人間に変化してるんだろうけど、オーラがヤバい…」 「う、うん…。倉橋を見に来たのかな…」 倉橋が座る方を2人でそっと覗くと、後ろを向いた倉橋が、大きく溜め息を吐く姿が見えた。

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